堤方権現台遺跡のむかし物語① ウミガメ骨製紡錘車 ウミガメ 動物遺体

ウミガメ骨製紡錘車

ウミガメ科の肋骨板を素材とした円盤状の骨製品は、形状から紡錘車と思われますが、紐を通せば装飾品にもなるので、機能的な点は断定しがたいものです。

製品の両面表層は緻密質、中間層は海綿質からなる平坦な扁平骨で、片面にやや放射状に走る顕著な微細条溝が認められること、ウミガメ科の肋骨板の突起部と考えられる構造の痕跡が認められることから、ウミガメ科肋骨板の外縁部付近と判断されました(㈱パレオラボ)。

突起部を削って平らな板状に整形し、円盤状に加工してあります。厚さは5.6mm、直径は49.6mm です。
厚さから、比較的小型のウミガメと推定されます。

東京湾内に来遊したものを捕獲したか、付近の海岸に打ち上げられた遺体を利用したものと推測されます。
保存状態は良好ですが、焼けて白色を呈しており、意図的に焼かれた可能性も考えられます。

今回の調査で明らかになった権現台遺跡出土骨を調査した結果、魚類ではフグ科、爬虫類ではウミガメ科、哺乳類ではイノシシ、シカが同定され、本遺跡でこれらの動物が利用されていたことが確認されました。
東京湾岸の弥生時代遺跡としては非常に珍しく、この地域・時代のウミガメ利用を示す貴重な事例と言えます。

【ウミガメ骨を骨角器素材にする例】

北海道で動物遺体を研究している知人からのコメントを紹介しておきますので参考としてください。


鹿児島・薩南諸島であっても柊原貝塚で髪針・垂飾品、西原海岸遺跡で詳細不明品があるくらい(「薩南諸島及び南九州における遺跡出土のウミガメについて」石堂和博『民俗文化』 Vol.24, (2012. 11) ,p.243- 268近畿大学民俗学研究所)。

縄文では、骨の形状のままに穿孔した垂飾品が縄文後期を中心に千葉県域を中心に関東、東北、北陸にある(『骨角器の研究 縄文篇Ⅰ』金子浩昌・忍沢成視1986慶友社)。

沖縄では77遺跡から出土しても、骨製品は5遺跡くらい(「南西諸島のジュゴン・ウミガメ・イルカ・クジラ遺体」波形早季子2004『動物考古学』21 )。

鯨骨製紡錘車は、壱岐・原の辻遺跡、鳥取・青谷上寺地遺跡(銛刺痕跡)、韓国の遺跡で出土している。
鹿角製紡錘車は愛知・朝日遺跡で出土している。


各地でさまざまな骨角器素材の遺物が出土していますが、円盤に加工して穿孔したウミガメ骨製品は、極めて珍しいものです。

堤方権現台遺跡、弥生時代の出土品

ウミガメ 動物遺体

堤方権現台遺跡のむかし物語①ウミガメ骨製紡錘車


堤方権現台遺跡のむかし物語②

堤方権現台遺跡のむかし物語①

芳心院の落飾