カレンダーがなかったら?
もし突然、この世から時計が無くなってしまったら?カレンダーがなくなってしまったら?
そんな世界は想像もつかないほど、それらは私達には手放せないものとなっています。
時計は太陽の位置である程度の時間が確認できますが、カレンダーがなかったら今が何月何日なのか何で知ればいいのでしょう。
現代の私達は手元に腕時計を持ち、どこにでもある時計を見ながら時間に追われるように生活しています。そして、毎年新しく印刷されるカレンダーを見るだけで、今日が何年の何月何日か当然のようにすぐにわかります。あまりにも当たりまえになっていますけれど、時計さえもない時代に生きた人々はいったいどうやって生活していたのでしょうか。
トム・ハンクス主演の映画「キャスト・アウェイ」は、貨物飛行機の墜落によって無人島に流されてしまう男の話です。何年も無人島でサバイバル生活をしていく中で、墜落してから何日が過ぎたのかを岩に刻みながらも、果たして今日が何月何日なのか自問するシーンが印象的でした。もし、同じような状況に陥ったら、恐らく私達も彼と似たような状態になってしまうことでしょう。そして、昼は太陽で時を測り、夜に輝く月や星を見ながら日数を数えはじめるかもしれません。
月からできた暦「太陰暦」
古代、太陽や月や星の運行から、廻る季節の規則性に気づいた人々は、現在のカレンダーの原型のようなものを作りました。太陽の巡りでも日を数えられますが、月はさらに細かく日を分けることができました。月の様相は日々変わるからです。その為、暦は全て太陰暦から始まったとされています。太陽暦でも一ヶ月が約30日なのは、太陰暦から引き継がれたことの名残といわれています。
日本では「一か月」という言葉に「月」が入っていることや、日本神話に「月読み(ツクヨミ)」という月の神様がいらっしゃることからも、月と暦の関係は容易に想像できます。
「一ヶ月」を表す英語「Month」も、月「moon」の語源とつながりを同じくし、古印欧語の「Men」から派生しているとされています。この「Men」は「測る」という意味があって「measure(メジャー)」や「meter(メーター)」なども同じ語源です。
因みに、カレンダー「calendar」は、「朔日」を意味するラテン語「calendae」から来ているのだそう。古代ローマ時代に太陰太陽暦が使われていたことの証です。新月(*)の細い月の線が見えると、神官が「新月(*)が見えたぞー」と大声で叫んで、新たな月が始まる宣言したのだそう。その「叫ぶ」という行為をラテン語で「Calo」と言ったことから来ているのだとか。カレンダーの語源からも、太陰暦との関係が裏付けられます。
*この場合は「新月」は初めて見える月の意味での新月です。この場合は二日月くらいの細い月。月が太陽と重なってしまって全く見えない場合も「新月」という。昨今では「新月」と言えば、見えない「新月」の解釈のほうが多い。
世界最古のカレンダーは月の暦だった
現存する世界最古の暦は、メソポタミア文明の初期に起ったシュメール都市文明のものです。シュメールの暦は1年が354日の太陰暦でした。一ヶ月は新月から次の新月までの日数で、30日の大の月と29日の小の月を交互に繰り返していたようです。また、シュメールでは月の代表的な様相とされる「新月」「下弦月」「満月」「上弦月」に祭りを執り行っていたようで、それが現在の一週間の起源になったのではないかともいわれています。
シュメールの一年は春分の日を基点に始まったとされています。春分の太陽の位置を確認していたということは、既に、太陰太陽暦になりつつあったのかもしれません。
チグリス・ユーフラテス川にはさまれた肥沃な土地であるメソポタミアでは、紀元前7000~6000年くらいに小麦栽培が始まったとされており、シュメール人たちは灌漑をすることで、農業の生産性を大変高めることに成功しました。そして人口はだんだん増え、王権が成立し都市国家が広がっていきました。
シュメールの暦の「月」の名前には「羊に大麦・水を運ぶ月」や「牛を登録する月」など農耕との関係性を示唆するような月名が付けられています。また、地方によって祭る神様が違っていたようですが、その地で祭られていた神様の名前が月名になっているものも多く、神へのお祭りや農業の記録としての暦の役割もあったのだろうことが想像されます。
夜空の月から日を数えることは、洋の東西ともに暦の始まりだったのです。
暦のはなし~カレンダーと月の関係
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