「広長舌を出して、上梵世に至らしめ」
「妙法蓮華経如来神力品第二十一」の一節です。
前回、仏さまは大慈大悲のお心をすべての人々の前で十種類の不思議なお力として顕されました。
そのお名前をご紹介させていただきましたが、今回から、その十種類のお力を一つ一つ進めてまいります。
まず第一に「出広長舌(すいこうちょうぜつ)」です。
来集した人々の前で久遠の仏さまは少しずつ口を開かれました。
実は地涌の菩薩さまたちが末法弘教を願われたばかり、そのご返事ではと一心に合掌をして待っていたところ、言葉を発せられるのではなく広く長い舌をすっと出されました。
舌は鼻先を過ぎ、額も過ぎ上へ上へと伸び、みるみるうちに梵天さまのところまで到達しました。
今日的発想からは外れますが、これは仏さまがお説きになられるみ教えはすべてうそ偽りのない真実の教えであることの証明でありました。
古来、インドでは「私は嘘をつきません、私の言うことは本当です」と舌を出したと言います。
法華経上、この習慣が示されたわけです。
仏さまはインドの地にご出現なされましたが、これは仮の姿であり実はそれ以前の遠い昔からの生命のつながりの中のお姿なのであります。
目に見える姿が尊いのであれば、その根本となる奥にある目に見えないものも尊いはずです。
私たちがつい勘違いをしてしまうのは、眼前に現れたものの姿だけで判断をしてしまうことです。
肝心なことはその目に見えない根本もあわせてしっかりととらえ信じていくことなのです。
法華経について
出広長舌 梵天