帰ってきた彫刻たち
昨年4月本立寺旧本堂解体の際に取り外された彫刻の天邪鬼・獅子・獏が戻ってきました。
築300年の本堂は惜しまれながらも解体されましたが、何とか昔のものを残したいという思いから彫刻だけは再生されました。
300年間風雨にさらされた彫刻たち。
取り外された際はふっと肩の荷を下ろししたような表情でした。(1枚目の写真)
そして1年間の休息の後、リフレッシュして戻ってきてくれました。
天邪鬼
人の心を惑わし悪戯をしかける天邪鬼は、四天王に踏みつけられたり、屋根を背負って支えたり、彫刻のモチーフとしてよく使われます。
旧本堂では向拝(ごはい=正面の屋根が張り出した部分)の蟇股(かえるまた=上からの重 さを分散させる蛙の股上の装飾部材)がこの天邪鬼でした。
蟇股に天邪鬼が使われるケースは大変珍しいそうです。
天邪鬼の蟇股は、新本堂でも同じ位置に取り付けられました。
力士のようなお腹と筋肉隆々の双肩で屋根を支え、まさに邪気を追い払うように正面を見据えています。
獅子と獏
旧本堂向拝柱上部の木鼻(きばな)には獅子と獏(ばく)の彫刻が取り付けられていました。
獅子と獏の木鼻が用いられることは多く、通常右側に口の開いた「阿」、左側が口を閉じた「吽」の2体ずつ2組のペアを配します。
しかし、旧本堂の場合は獅子のみが左が「阿」、右が「吽」という変則でした。
天邪鬼が真ん中にいるから反対にという洒落を聞かせたのではないかと楽しく想像しています。
新本堂向拝の木鼻彫刻は新調され、「獅子と獏」ではなく「獅子と像」のペアになりました。
獏と像の見分け方は、耳が上を向いているのが獏、耳がたれているのが像ということです。
2枚目の写真は、旧本堂の天邪鬼蟇股と新調された木鼻のチームです。
旧彫刻の獅子と獏はペアを解消し、本堂の四隅の柱に一体ずつ取り付けられました。(4枚組の写真)
これまで300年間、本堂を守り続けた彫刻たち。
今後また数百年新本堂をお守りください。
おつかれさま。そしてこれからもよろしくお願いしますと手を合わせました。
本堂新築について
天邪鬼 獅子・獏