天井
伊勢神宮など日本古来の建物に天井はありませんでした。
仏教伝来により天井が張られた仏堂が建てられ、住宅に普及するようになったのは平安時代中期以降です。
中国の漢民族は中庭を囲んで住居をつくり、屋根に降った雨水を中庭の瓶に集め利用していました。
そこで天は井戸であり、天井(てんせい)とよぶようになりました。
その呼称が日本に伝えられ、上の方にあるものを天井(てんじょう)というようになったという説があります。
また、火災をきらい天の井戸に防火の願いをこめたともいわれています。
仏教で「天」は四天王や梵天、帝釈天などの守護神とその神々の住む場所を意味します。
洋の東西を問わず宗教建築には天を象徴する天井画が描かれています。
仏教寺院は蓮の花や天華で天井を埋めつくしたり、仏さまや天人の姿で道場を荘厳します。
キリスト教会はキリストの昇天や天使が、イスラム教のモスクにも植物の文様が描かれています。
天井という呼び名には、天の守護を求めるとともに、天に見られているから悪いことはできないと自らを律する思いも込められている気がします。
みんながやっているから自分一人が悪いわけではないといったり、人に迷惑をかけなければ何をやっても許されると自己中心的な人が増えています。
そんなとき、お寺にお参りして天井を見上げてみましょう。
天の井戸から水底の私たちをのぞいている仏さまの顔が見えるかもしれません。
天井について
天井 天