縁側
夏蒸し暑く、冬寒い日本の気候風土の中で快適に住まう知恵のひとつが縁側です。
夏には日差しが室内に入るのをさえぎり、庭の緑を通して涼しい風を運びます。
冬には陽だまりをつくり、家庭の憩いの場となります。
かつては縁側と庭の間には建具がなく、雨から障子や畳を守るためにも縁側は大切でした。
また、縁側は人と自然が交わる場であるとともに、いろいろな人と人が交わる場所でもあります。
正客を迎える出入り口、通りがかった人との社交の場、農作業や日常の仕事など多くの機能を持っています。
仏教では世の中のすべてのことは何かしらの関係があって、お互いに助け合い、生かされて今がある、そのつながりを「縁」といいます。
縁側は自然や人と数多くの「縁」を、ほどよいかたちで結び感じさせてくれるところだと思います。
しかし、入り口が扉一枚の現在の暮らしでは、「縁」を感じることはむずかしくなりました。
暑さ寒さには空調機で対応する、四季の変化はテレビの旅番組で感じる、人とのつながりは携帯電話やパソコンに求める。そのように自分が好む縁だけを選んでいると、もっと大きな「縁」の中で生かされていることを忘れてしまいます。
「縁なき衆生は度し難し」ということわざがあります。仏縁のない者は仏さまでも救えない。転じて、聞く耳を持たない者はどうしようもないという意味です。
縁なき衆生にならぬよう、「縁」を受け入れる心の縁側だけは持ち続けたいものです。
縁側について
縁側 縁