遺影の最新事情
葬儀の際、祭壇の中央に飾られる遺影、仏壇の上で額に納められている遺影。遺された方々にとって、亡き方を偲ぶために遺影は大切なものです。
遺族は臨終から通夜までの準備に追われ、悲しむ間もなく忙しい中で、遺影に使えそうな写真を選ぶのは大変だとよくいわれます。
昨今はデジタルカメラの普及によって、映像データが膨大で探しきれないとか、データを保存してあるパソコンのパスワードがわからずに写真が見つからないということもあり得ます。
運転免許証の小さな写真を引き伸ばして遺影にすることもよくあるそうです。
高齢になると写真を撮る機会も減り、数十年前の写真が遺影になる例も見受けられます。
そのような背景から、市販のエンディングノートには、遺影用にお気に入りの写真を貼るページや写真データを納めた保存媒体(CDやUSBメモリー)を入れるポケットなどが準備されているものもあります。
遺影を準備するのは縁起でもないという考えもある中で、遺影の撮影会や出張撮影の需要も増えているそうです。
あらためて自分らしい一枚の写真を撮るという行為が人生を振り返るよい機会にもつながるのではないでしょうか。
遺された方々が故人を偲ぶ上で遺影とともに心に刻まれるのがご遺体のお顔の表情です。
映画『おくりびと』の「納棺師」の仕事や、ご遺族の前で綺麗に死化粧をほどこす「エンゼルメーク」というサービスを行なう業者も増えてきました。
ご遺体の血液を薬液と交換し腐敗を抑え美しい状態で葬儀に臨む「エンバーミング」という技術や、病気や事故などで損傷したお顔を特殊メイクによって復元する技術も進んでいます。
一人の人間の死は、家族はじめ周囲の多くの人に影響を与えます。
最期の安らかなお顔は、遺された方々への大切な贈り物になると思います。
逝く人にとっての遺影
遺影をめぐる事情は大きく変化しています。
あなたが逝く立場で考えたとき、どんな遺影を準備しますか?
人間は一人では生きていくことができません。
何らかのつながりの中で生きているはずです。自分が死んでこの世に存在しなくなってからも、この世とのつながりを残す手立ての一つとして「遺影」があるのではないかと思います。
遺影用に選んであったお気に入りの写真が葬儀の前に見つかり、故人の思いを偲ぶよい機会になったというお話を聞いたことがあります。
誰かにこの写真を使うようにと伝えたり、思い出の写真にコメントを書き添えたりするだけでも、生きた証のバトンをつなぐことになるのではないでしょうか。
画像は、昭和21年3月6日ご命日、永寿院27世文章院日義聖人 金子厚山師の遺影です。
境内の牡丹の中で撮られた70年以上昔の写真です。
会ったことのない曽祖父ですが、いつも写真を見ながら手を合わせているのでとても親しく感じています。
日蓮聖人の遺影
池上本門寺大堂の日蓮聖人ご尊像は七回忌の際に、お弟子さんたちによって造立された日蓮聖人に生き写しのお姿だといわれています。
そのお像の前でお題目お唱えすると、日蓮聖人のお言葉が聞こえるような気がします。
そして七百数十年もこの法灯をつないでくださった先師に感謝の思いがわいてきます。
日蓮聖人の魂が宿る素晴らしい遺影だと思います。
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