夫と同じ墓に入りたくない
「死んでからも夫と一緒はいや」「舅や姑と同じお墓に入りたくない」「夫の先祖は自分の先祖ではない」「実家のお墓に入りたい」など様々な理由で配偶者と同じお墓に入らないことを『死後離婚』というそうです。
二十年ほど前の東京都の世論調査では「夫婦で同じ墓に入る必要がない」と考えている人が約三割でしたが、昨年テレビ番組が行なったアンケートでは「夫と同じ墓に入りたくない」と答えた主婦が六割近くもいたそうです。
墓を選ぶ自由があるといえばそれまでですが、永代供養墓や散骨などの宣伝広告や、面白おかしく情報を拡散するマスコミによって、日本人の宗教観が安易な方向に流されているような気もします。
姻族関係終了届
ここ十年間で「姻族関係修了届」の提出が急増しているそうです。
遺された配偶者が届けを出すだけで絶縁宣言ができる、もう一つの『死後離婚』です。
生前に離婚した場合は元配偶者の親兄弟との姻戚関係は自動的に解消されますが、死別の場合は「姻族関係終了届」を出さなければ義理の親兄弟に対する扶養義務は継続します。
配偶者がその親より先に亡くなった場合、舅姑の金銭面の援助や介護の負担も追わなければならなくなるかもしれません。
「夫が亡くなった時に姑から責められた」「介護に巻き込まれたくない」など、配偶者の実家との関係が希薄になったことの表れだといわれています。
お墓で語り合う
かつて嫁いだ妻は、跡取りを生み、舅姑に仕えて介護をして、墓や仏壇を守り、やがて自分もそこに入るのが当然とされてきました。それは封建的で女性が虐げられていたかのようにいわれますが、男も女も「家」を守ることに生きる意味を感じていた時代だったとも考えられます。
しかし、核家族化が進み、檀家制度が崩壊すると、ご先祖さまたちが「家」の中で受け継いできた大事なことが、いとも簡単に捨て去られていくように思えてなりません。
ご先祖さまたちが「家」の存在とその存続に命を懸けてこられた意味を真剣に考えて、お墓やお仏壇で一心にお題目を唱えてみると、何かお言葉をかけてくださるかもしれません。
もしあなたより先に、交流が少なかった舅姑や、不仲であった配偶者が先に亡くなったら、お墓や仏壇に向かってあなたの言い分を全部言いつくした上で、お題目を唱え成仏を祈ってみてください。それを繰り返していればいつか感謝の笑顔が返ってくるでしょう。あせって死後離婚をしてしまうと、仏さまを介して理解し合う大事な機会を失ってしまうかもしれません。
ただし、配偶者や親族から暴力や虐待を受けている場合は、誰かに助けを求めることも必要です。本誌執筆陣 戸沢宗充師の『サンガ天城』のような駆け込み寺もあります。
妻が寺に駆け込まなければ離縁できなかった時代と違い、離婚件数が毎年二十万組を超える現状は考えものではありますが、生前も死後も離婚を決める前に、まずはお寺に駆け込み相談してみませんか。
まんだらエンディングノート
駆け込み寺 姻族関係修了届