空き家問題とは
現代の日本には空き家が増えて様々な問題が生じています。
過疎地では人口減少がその原因とされています。
逆に人口が集中する都市部では一戸建て住宅やマンションの新築が相次ぎ、住宅の供給過多が起こり、中古住宅が流通せず、空き家問題に発展しているといわれます。
また、核家族化が進んだ現代、子供世代が就職や結婚で実家を離れ、それぞれ住まい持ったときから、実家の「空き家化」が始まっているとも考えられます。
今後、団塊の世代が相続をする時期となり、更に空き家が増えていくことは目に見えています。
両親が亡くなり、相続が発生しても、遺品等の整理に伴い心の整理がつかず、とりあえず片づけを先送りして空き家になるケースも多いといいます。
また、空き家を維持することになった場合、税金・維持管理費・修繕費・交通費などの経済的負担や、周辺住民からの苦情や自治体からの指導などへの対応も負担となることでしょう。
立地条件によっては、売り手も貸し手も見つからず、負の遺産としかならないという話も耳にします。
空き家が放置されると、倒壊・崩壊・火災の危険、ごみの不法投棄、治安・景観・周辺住環境の悪化等が起こります。
相続放棄された空き家が周辺へ悪影響を及ぼすことになれば、行政代執行で解体除去され、税金が投入されることになります。
このように様々なことを考えていくと、空き家問題は個人の問題ではなく、未来の日本をどうするかという大きな問題であることがわかります。
住まいの終活
『老いた家 衰えぬ街 住まいを終活する』(野澤千絵著・ 二〇一九年)という本に「住まいの終活」の提言があります。
住まいに関わる歴史や思い出を書きとめ、不動産に関する書類・図面等の基礎資料を整理し、売買・賃貸・解体等の情報を収集したうえで、相続予定者と残される家の行く末についてよく話し合い、ベストな選択をしてほしいというものです。
ただし、「親が死ぬのを待っているのか」「相続で実家を取ろうとしているのか」など家族関係が悪化しないように気遣いながら、皆が幸せな未来を過ごすための作業であることを合意したうえで話を進めることが大切です。
先祖代々の家を住み継ぐということが稀になった現代、住まいが使い捨てにならぬよう、世の中全体で考えていかなければなりません。
火宅に住む
法華経「譬喩品第三」には「三車火宅の喩」が説かれています。
裕福な長者が大勢の子供とともに大邸宅に住んでいました。
ある時、この長者の邸宅に火災が発生しました。
しかし、子供たちは遊びに夢中で火事に気づきません。
そこで長者は「門の外の珍しい三つの車を与えるから早く外に出るのだ」と誘い出し、子供たちは難を免れることができたという話です。
私たちは、火が迫っていても気づかずに、またはまだ大丈夫だろうと先送りをして遊ぶ子供のようなものです。
空き家問題に限らず、世界各地の戦乱・自然災害・環境破壊等に気づかぬふりをしていると、あっという間に炎に飲み込まれてしまうことでしょう。
火宅から子供たちを救い出した長者はお釈迦さま、長者が与えた車は法華経のたとえです。
どんな場面でも適切な判断ができる仏さまの智慧と慈悲を具えたその車には、他にも仏の悟りへの道を進むために必要な力が満載されています。
仏の智慧や悟りは、目に見えない不思議な世界で発揮されるものではなく、私たちが暮らすこの現実世界で活かされるべきものです。
お釈迦さまが呼ぶ声に耳を傾け、仏さまの智慧と慈悲を身に着けて、今できることに努めましょう。
空き家問題
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