七十二候で季節を感じる 五十九候 二十四節気と七十二候 時雨 旧暦 時雨

二十四節気と七十二候 時雨

二十四節気とは、冬至を起点に一年を24に分割したものです。まず、冬至と夏至が一年を2つに分割。さらに春分と秋分で4分割されて、春・夏・秋・冬となります。各季節の開始を立春・立夏・立秋・立冬と名付け、8分割に。さらにその8分割したものを3等分すると、約15日の期間で分けられる二十四節気となります。二十四節気をさらに5日ごとに分けたもので、気候の細やかな変化を表現しているのが七十二候です。

七十二候で季節を感じる・・・新暦11月27日は旧暦の十月十四日。月も満ちてきています。

第五十九候・・・北風、落ち葉を払う。

北西の季節風が吹き、日本海側で湿った雲が風にのって東へと吹きはじめると、にわか雨がよく降り始めます。この時期、旧暦十月頃に降るにわか雨は、時雨(しぐれ)と呼ばれます。そのことから旧暦十月を時雨月とも。ひと雨降るごとに寒さが身に染みて感じられる頃です。

   神無月(かんなずき) 降りみ降らずみ定めなき 時雨ぞ冬の はじめなりけり 

                                『後撰集』 詠み人しらず

きれいに色づいた紅葉や銀杏の葉は時雨に濡れ、そして木枯らしに吹かれ舞い落ちてゆきます。枯葉がはらはらと散ってゆく様子は優雅で情緒あふれる景色。秋から冬にかけては「気枯れ」とも言われ、気が枯れ、太陽の光も弱くなってゆく季節ですが、この時期こそが日本のわび、さびのイメージではないでしょうか。物悲しさの中に潜む美しさ。そんな散りゆく美を惜しむ歌は昔から多く詠まれています。


   神無月 時雨にあへる 黄葉(もみちば)の 吹かば散りなむ 風のまにまに
 
                                『万葉集』 大伴池主
 
   かみな月 風に紅葉のちる時は そこはかとなく 物ぞかなしき 

                                『新古今集』  藤原高光 





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旧暦十月十二日は「時雨忌」

時雨忌 。松尾芭蕉が亡くなったのは旧暦十月十二日。時雨旧暦十月の異称であり、芭蕉は好んで時雨を詠んだことから、旧暦の十月を時雨忌とも言います。

  初しぐれ猿も小蓑をほしげ也      芭蕉   
    
  けふばかり人も年よれ初時雨      芭蕉

「奥の細道」は芭蕉が45歳ではじめた俳句の旅の紀行作品です。元禄2年の春に江戸深川を出発し、東北と北陸へと600里(2400キロ)をも歩き、約150日で踏破したと聞きます。人生50年と言われた昔の感覚だと、45歳と言う年齢はもう人生の終盤という認識だったのでしょうか。芭蕉は旅から帰って5年後の1694年の旧暦十月十二日に、大坂御堂筋の旅宿・花屋仁左衛門方で「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」の句を残して亡くなります。
芭蕉はなぜ旅をつづけたのでしょうか。旅の途中で人生を終えることを覚悟していたようにも思えてなりません。終の棲家も引き払った芭蕉の頭の中のエンディングノートには何が書かれていたのでしょう?
そんなことを想いながら芭蕉の句を味わいました。

   

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