七十二候で季節を感じる  七十二候 小雪末候 橘始黄 橘 七十二候

七十二候 小雪末候 橘始黄

二十四節気とは、冬至を起点に一年を24に分割したものです。まず、冬至と夏至が一年を2つに分割。さらに春分と秋分で4分割されて、春・夏・秋・冬となります。各季節の開始を立春・立夏・立秋・立冬と名付け、8分割に。さらにその8分割したものを3等分すると、約15日の期間で分けられる二十四節気となります。二十四節気をさらに5日ごとに分けたもので、気候の細やかな変化を表現しているのが七十二候です。


七十二候 第六十候・・・、はじめて黄ばむ

(たちばな)は柑系の常緑低樹木で、橙色の実が生るミカン科の植物。古来の日本に自生していました。別名ヤマトタチバナとも呼ばれる。現在は、萩市に自生しているのが確認されているようですが、絶滅危惧種とされ、国の天然記念物に指定されています。

橘~非時香木実(とくじくのかぐのこのみ)

「日本書記」には、垂仁天皇が田道間守(たぢまもり)を常世の国に遣わし、永遠の命をもたらすと言われる、非時香木実(ときじくのかぐのこのみ)という不老不死の妖力を持つ霊薬を持ち帰らせるという話が載っていますが、その非時香菓は「是今也(これ今、なり)」とされています。その為、京都御所には右近のが植えられたといいます。
また、は常緑樹であるため、冬の寒さの中でも枯れないところから、永遠を現わす神聖な植物とされていました。万葉集にはを詠んだ歌が多く残されていますが、ほとんどがの白く愛らしい、香りの良い花を歌っています。の常緑樹としての神聖さを歌った代表的な歌をご紹介しましょう。

 は実さへ花さへその葉さへ枝に霜降れどいや常葉の木 

                         「万葉集」聖武天皇

 常世物こののいや照りにわご大王は今も見るごと

                         「万葉集」大伴家持

爽やかな香りの柑系の実はビタミンCもたっぷりと含まれています。昔から風邪の予防として、ビタミンの豊富なミカンなどの柑系の果物の栄養は認められていました。現在、自生のはほとんど見られなくなってしまいましたが、日本全国に植えられた柑類の樹木は、子孫繁栄や永遠の象徴とされ、さらなる品種改良を経て、今では日本の冬に欠かせない果物「みかん」となって根付いています。
常世の国から、非時香菓を持ち帰ったとされる田道間守(たぢまもり)【古事記では多遅麻毛理】は、現代では菓子の神様として崇められています。非時香木実は、今の私たちにとってのお菓子のように、古の人々にとっては「甘くて美味しいもの」だったのからなのかもしれません。

橘の意匠

文化勲章のデザインもを意匠したものとされています。
当初は、桜の意匠が検討されていたようですが、昭和天皇の助言で、桜は花も葉も散ってしまい武士の象徴だが、はいつ見ても変わらぬ常緑樹であることから、文化の永遠性の象徴としてふさわしいをデザインすることに決定したようです。
家紋としても多くの意匠がある。日蓮宗の寺院によく見られる井桁にの寺紋は、法華に帰依の篤い井伊家の家紋によると言われていますが、永遠性を現わす常緑樹のは26種もの家紋があることからも、大変好ましい意匠デザインだったのだと判ります。
常緑であることから、神の依り代とされてきた。お正月の鏡餅に乗せる橙(だいだい)も、中世以降に「だいだい」と呼ばれるようになったものの、本来はであったそう。
は古来から、日本人に大切にされてきた植物だったのです。



七十二候で季節を感じる 橘

橘 七十二候

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