二十四節気 晴明
清明 (三月節)
新暦4月5日頃
清明とは清浄明潔の略。江戸時代に現わされた「こよみ便覧」によると、
万物発して清浄明潔なれば 此芽は何の草としるる也
万物が明るく清らかで、生き生きと草木が芽吹きだし、草木の種類がわかるようになってくるという意味。多くの様々な花々が咲き競う季節の到来です。
「こよみ便覧」とは、 太 玄斎( たい げんさい)( 松平頼救[よりすけ]常陸宍戸藩の第5代藩主 ) が、天明7年(1787年) に著した暦の解説書。
国立国会図書館デジタル化資料でご覧いただけます。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2536637/7
七十二候 清明初候(第十三候) 玄鳥至る
(げんちょういたる)と読ませます。
玄鳥とはツバメの事。ツバメが南から飛んでくる頃の意です。
近頃はツバメの減少が懸念されています。農耕地の減少や里山の宅地化により、巣作りの環境が減っていることが原因とされているようですが、カラスの襲撃や放射能の影響も考えられています。
昨年、日本野鳥の会ではツバメの減少を危惧し、「消えゆくツバメを守ろうキャンペーン」をはじめました。2013年4月からは、日本全国でツバメの巣作りや子育ての状況調査を開始。各地からのツバメの巣作り報告を待っているようです。「ツバメが軒下に巣をつくるとその家は繁栄する」などと、昔から言い伝われています。もし、ご自宅の軒下にツバメが巣作りを始めたら、ぜひ、日本野鳥の会に報告してあげてはいかがでしょう。
都会では、ツバメが安心して子育てが出来る「軒下」をもつ家自体があまりないのでしょうし、たとえ、ツバメが巣作りを始めても、その巣から落ちる糞に悩まされる煩わしさから、排除しようと考えてしまうこともあるでしょう。
できれば、渡り鳥であるツバメのヒナの成長を楽しむことが出来る、心の余裕がある方が一人でも多くいらっしゃると良いなと思います。もしかしたら、その心の余裕こそが「ツバメの幸運」を生み出す元なのかもしれませんから。
http://www.wbsj.org/nature/research/tsubame/index.html
七十二候 晴明の次候 鴻雁北す
七十二候 第一四候 鴻雁北す
4月9日頃
(こうがんきたす)と読ませます。
渡り鳥である雁が北へ渡る頃。
雁はカモ科の水鳥の総称。冬には各地で私たちを楽しませてくれた雁たちも、北へと帰る季節です。
ものすごい数の雁が群れを成して飛びたつ様子は圧巻でしょう。春に北へ帰り、晩秋にはまた日本にやってくる雁は、奈良の昔から歌にも良く詠まれてきました。
北へと帰る雁を惜しむ気持ちを表現した、哀愁漂う歌が多いのは雁が冬鳥だからでしょうか。奈良時代にはカリ、カリガネと呼ばれた雁ですが、時代を下るとガンと「雁」を音読みしたものが一般化したようです。
燕来る 時になりぬと 雁がねは 国偲ひつつ 雲隠り鳴く
大伴家持(万葉集)
鳥の声が盛んな春ですが、中国では、人に感染したという鳥インフルエンザも報告されています。大事に至らないといいですね。
七十二候 清明末候 虹始見る
七十二候 第一五候 虹始見る
4月14日頃
(にじはじめてあらわる)と読ませます。
初冬の二十四節気である小寒の初候「虹蔵不見にじかくれてみえず」と対になっています。
春分を過ぎ、夏至に向かい日が長くなってゆきますから、太陽の光が雨上がりの虹を空に浮きだすほどの強さになってきているのでしょう。それでもまだまだ、夏の頃の虹には及ばず儚い春の虹です。今年初の虹は初虹と呼ばれますが私は未だ見られていません。
虹は太陽の入光角度によってその大きさが変わってくるため、夕方の方がより大きな虹が見られます。雨粒の大きさと、太陽光の角度、そして虹に出会える幸運も重なってやっと虹に出会えるのですね。
さて、世界各地で神話や伝説となっている虹。ギリシャ神話では虹はイリス女神そのものを現わします。彼女は神々の伝令を伝える役目で、天と地を行き来する有翼の女神です。
天と地を繋ぐ存在としての虹は、神界と通じる橋とされることも多く、日本でも天の浮橋を虹とする説があります。そのほか、中国やアボリジニ族などの神話には、蛇や竜の化身としての虹の話もあり、雨や雲を司るとも。また、天空に浮かぶ半円形から、「弓」と表現する国もあります。英語でRain bowは雨と弓の造語ですし、インドでもインドラ神の雷を放つ弓とされています。
天空で繰り広げられる壮大な自然のパノラマは、人に脅威を与えると共に、異界の存在を想像させるものですが、虹もその一つ。
ニュートンが発見した光のスペクトルと科学的に理解はできても、やはり美しい虹を目の当たりにすると、形而上的な何かを感ぜずにはいられません。
二十四節気と七十二候 晴明
七十二候 清明