二十四節気 小満
小満 (四月中)
5月20日頃~
「万物盈満(えいまん)すれば草木枝葉繁る」(こよみ便覧)
爽やかな気持ちいい陽気になり、草木の枝葉はグングン成長し、新緑は日ごとに色濃くなってきています。私達人間にとっても気持ちの良い過ごしやすい気候です。
沖縄では「小満芒種」と書いて「スーマンボウスー」と言い、二十四節気の小満から芒種にかけての沖縄の梅雨の時期のことをこう呼ぶそうです。実際、沖縄は先日の5/14に梅雨入り宣言されましたから、二十四節気の小満と、ほぼ合っていると言ってもよいのでしょう。
小満は旧暦四月の中気です。小満を迎え、五月の節気である芒種までは爽やかな季節。
薫風(くんぷう)は、青葉の香りを載せて吹くこのころの南風です。
5月下旬には、夕方の西の空で金星、木星、水星が大接近します。木星は日に日に西へと沈んでいきますが、対して金星と水星は高度をあげていきます。3つの星の高度は10度と低いので、建物があると見えにくいかもしれません。高いところからなら容易に観測できるでしょう。
-4等級の金星が一番大きく、-2等級の木星が少し小さめ、-1等級の水星は一番小さく輝いています。3つの惑星がお互いに一番近づきあうのが5月27日です。30日には地平線近くに輝く木星、金星、水星が縦に並ぶ様子が見られるかもしれません。
七十二候 小満初候 蚕起きて桑を食らう
小満 第二十二候 蚕起食桑
5月21日頃~
「蚕おきて桑を食らう」と読ませます。
旧暦四月は「卯月」ですが「木の葉取り月」という別名もあります。
「桑の葉を摘む月」と言う意味です。
この時期、絹を生み出す蚕は新鮮な桑の葉しか食べないので、その為の桑の葉摘みをしていたのですね。
明治期から昭和初期にかけて、日本の主力輸出品目だった絹。最盛期は農家の四割が養蚕に携わっていたそうです。絹織物一反に必要な絹糸は、約900gで、そのためには蚕が2700頭も必要なのだとか。
蚕にも種類があるので一概には言えませんが、それだけの蚕を育てるのに必要な桑の葉は、なんと98キロだそうですから、桑の葉摘みも大変だったことでしょう。
蚕の出自は5000年前の東アジアからと言われています。絹を生み出す蚕は門外不出の大切な秘密でした。シルクロードというヨーロッパとアジアを結ぶ商の道は、絹取引により富を生み出し、思想や文化を伝える重要な交通網として栄えました。日本における最古の絹織物は弥生時代のもので、北九州で発見されていますから、その頃には日本にも伝わっていたと考えられています。
七十二候 小満次候 紅花栄う
小満 二十三候 紅花栄
5月26日頃~
「べにばなさかう」と読ませます。
紅花が咲く頃の意。
紅花は染料や口紅の原料。主に山形県の最上川流域で盛んに栽培されたようです。
別名「末摘花(すえつむはな)」。この名は、茎の先端につく花を摘み取って染料につかわれる為にそう呼ばれました。絹もそうですが、紅花もシルクロードを通じて日本に伝わりました。元はエジプトが原産。日本に紅花が伝わったのは飛鳥時代の頃で、呉の国から伝わったとされたことから、呉の藍→「呉藍」(くれない)が転じて、「紅(くれない)」となったのだそう。
江戸時代には「紅一匁、金一匁」といわれたほど、紅花から取れた口紅やほお紅は高級品とされていました。現在でも「紅花染め」は貴重品です。
七十二候 小満末候 麦秋至る
小満 二十四候 麦秋至
5月31日頃~
「ばくしゅういたる」と読ませます。
麦を収穫する頃という意。
もともと、小満の由来は、麦の穂がついたことを喜び、農民がほっと安堵して小さな満足を得ることから「小満」と言われたとの説もあるようです。初夏の時期になぜ「麦の秋」なのかというと、麦にとっての「収穫の秋」という意味なので季節は初夏です。
関東北部などでは、二毛作として麦と稲が作付されることが多く、小麦や大麦が植えられ、その刈取り後に稲の田植えが行われます。私の出身地である栃木県南部でも、この時期、金色の麦の穂が風に吹かれ海原のように美しく波打つ風景が一面に広がっています。栃木県は二条大麦の生産が全国一位と、最近はビール麦が多く植えられているようです。そのほか、うどんなどに使われる小麦や、麦茶や押麦とされる六条大麦も作付けされています。収穫は五月から六月にかけて。麦の刈取り後、畑は水が流されて水田になり、そこに稲苗を田植えしていきます。
二種類の作物を同じ土地で収穫する二毛作。二毛作の「毛(け)」は穀物を意味し、「不毛の地」の「毛」と同じ意味です。栃木県を古くは「下毛(しもつけ)」群馬県を「上毛(こうづけ)」といったのも、「毛」を雑穀や植物の実りの所という意味で名付けたのではないかという説があるようです。
6月5日は芒種です。いよいよ梅雨の時期がはじまります。6月といえば、制服のある学校や職場では衣替えですね。本来、旧暦の四月一日に行われた衣替えは、新暦では5月10日頃のこと。「四月一日」を「わたぬき」と読むのも、「衣替えのために着物から綿を抜くこと」から来た言葉です。
二十四節気 小満
小満 二十四節気