二十四節気 芒種
芒種 (五月節)
6月5日~
芒は「のぎ」と読みます。米や麦などのイネ科の植物の穂にある針状の尖ったものを指します。この芒を持つ穀物の種を蒔く時期が「芒種」と言われています。
芒種のこの時期、関東ではすでに田植えが済んでいる所が多いようですね。
旧暦5月は皐月(さつき)。早苗を植える月、田植えの月です。
このころの雨は五月雨(さみだれ)聖なる乱れ→水垂れの意味も。
二十四節気の芒種の頃から夏至にかけては、大体梅雨の時期と重なります。
梅雨は文字通り梅の雨。梅の実が実る頃に降る雨ということから来ています。
八百屋さんやスーパーの店内には青梅の実と共に梅酒を作る為のセットが売られています。
最近の梅酒人気で自家製梅酒を作っている人も多いのではないでしょうか。
今年は例年より早い関東の梅雨入り宣言でしたが、湿気のない気持ちのいい晴れの日が続いています。一般的に梅雨は、日本列島の北にある冷たく湿ったオホーツク海気団と、南にある温かく湿った小笠原気団がせめぎ合い、間に出来る停滞前線が原因と言われていますが、複雑な気象現象ですからそうは簡単にはいかないものですね。
モンスーンアジアの東端の一部である日本。モンスーンは季節風の事です。
季節風は世界中にいくつかありますが、アジアモンスーンは特に大きな季節風です。その源流は、なんと5月中ごろにアフリカ東岸のマダガスカル付近で発生し、アフリカ東部から日本までの、約1万キロもの風の流れを作っています。
アフリカ東部からインドへと、湿ったインド洋の空気を受けながら、季節風は世界の屋根であるチベット高原に阻まれて、インドを含めた南・東南アジアに雨をもたらし、さらに、インドシナ半島や中国南部、日本へかけての梅雨の要因にもなっていると言われています。
アジアモンスーンの吹く地域を「モンスーンアジア」と言い、この地域は5月~7月にかけて雨季となり、稲作を中心とした農業の発展を促してきた歴史があります。モンスーンアジアから少し外れると、稲よりも麦が中心の農業形態になるのです。
このモンスーンアジア地域は照葉樹林帯でもあります。
この地域の特徴は、
・餅や米が主食であること。
・味噌などの発酵食品があること。
・「座る」という文化があること。
私達が東南アジアなど他のモンスーンアジアの国々に親近感を抱くのは当然のことなのですね。
「仏教」も多くがこのモンスーンアジアの国々で信仰されてきたことも併せて考えると、似通った生活様式や文化が、宗教の類似にまで影響を及ぼしたのではないかとさえ思ってしまいます。
七十二候 芒種初候 螳螂(とうろう)生ず
第二十五候 螳螂生
6月5日頃~
「とうろうしょうず」
「螳螂」はカマキリのこと。なぜカマキリが季節の農事を知らせる七十二候に出てくるのかはわかりませんが、中国から伝わった大衍暦・宣明暦から明治の略本暦までずっと、芒種の初候は「カマキリ生ず」なのですからやはり意味があるのでしょう。
害虫を食べてくれるカマキリは農民にとって有難い存在だったのかもしれませんね。
カマキリは「鎌を持つキリギリス」が名の由来とも。
ただ、「螳螂」の漢字の由来も気になるところです。
「蟷螂の斧」という言葉もあり、カマキリが前足を揚げて目の前にいる自分より大きいものの進行を停めようとする様子から、「自分の度量をわきまえず、強敵を相手にすること」「儚い抵抗」と言う、少しマイナスの意味があります。でも、所詮負けるとわかっていても、大きな鎌の手で何かに挑むような態度は、挑戦的で積極的な強さを表しているようにも見えるのです。ちょっとかっこいい気がしてしまいます。
七十二候 芒種次候 腐草為蛍
芒種 二十六候 腐草為蛍
6月11日頃~
「ふそうほたるとなる」
蛍は腐った草から生まれると思われていたようです。蛍はきれいな水辺で発光しながら飛びますが、この光は雄の方が強いのだそう。蛍の雄は子孫を残すために集団で光りながらメスにアピールします。雌の方も光りますが雄ほどではない、少し控えめな光を放つのです。明るい雄の光に反応して雌がささやかな光で答える・・・そんな風に相手を探していると思うと、夏の風物詩である蛍鑑賞も哀愁をもってみてしまいそうです。
七十二候 芒種末候 梅の子黄なり
芒種 二十七候 梅子黄
6月16日頃~
「うめのみきなり」
梅の実が黄色くなる頃。梅干しは黄色くなった梅から作ります。塩に漬けた梅を土用干しさせるために庭先に広げると、独特の酸っぱい香りを漂わせながら干上がって、だんだん小さくしわしわになっていきます。
クエン酸や有機酸など酸味が特徴の梅は、加工しなければ食べられませんが、長期に保存することができる貴重な保存食になります。梅干しはその代表であり素晴らしい健康食品です。シソの葉と共に漬けられた梅が出来上がるのには、手間と時間がかかりますが、手作りのものは特に美味しいですね。
昔から「いい塩梅」など言われます。塩加減と梅のバランスが丁度いい時に、美味しい梅干しができるのですね。私たちも「いい塩梅」でやっていけたらいいのですが・・・。
二十四節気と七十二候 芒種
芒種 七十二候