仏教ひとまわりツアー番外編
2013年12月17日(火)、目白の日本聖書神学校・メーヤー記念礼拝堂にて寺ネット・サンガ主催「仏教ひとまわりツアー番外編」が開催されました。
今回は教会でクリスマスについて知るツアーです。ツアー参加者と一緒にお坊さんたちも教会に集まりました。
日本基督(キリスト)教団新宿コミュニティー教会牧師の中村吉基(なかむらよしき)さんからお話を伺います。
日本では人口の約1パーセントほどしかいないキリスト教徒。中村牧師からキリスト教の歴史や教えについて、お話をお伺いしました。
教会と聞くとチャペルなど建物そのものを思い浮かべますが、日本で言う「講」と同じような意味で信徒の共同体のことを「教会」と呼ぶのだそうです。
新約聖書の冒頭には、マタイ・マルコ・ルカ・ヨハネの4つの福音書というキリストの言行を描いた文書があります。マルコによる福音書が一番古く、紀元65年〜70年ぐらいに記されたと考えられています。
クリスマスについての記述は、この福音書のどこに記されているのでしょう。
中村牧師は代表的な2つの物語を読み聞かせてくださいました。
・ルカによる福音書2章から、生まれたばかりのイエスが飼い葉桶に寝かされているのを天使のお告げを受けて探しにきた羊飼いと対面する。
・マタイによる福音書2章から、占星術の学者たちが星に導かれて幼子イエスに対面し、贈り物をささげる。
生まれたばかりのイエスに最初に出会った人たちは、貧しい羊飼いやユダヤ人から忌み嫌われていた異邦人の占星術師など社会的に虐げられていた弱い立場の人たちでした。そして聖書の中のイエス降誕物語の中には12月25日という日付は出てきません。
そこで12月25日という日付について、中村牧師からお話がありました。
かつてローマ帝国時代、ミトラ教という太陽神を崇める信仰が流行していました。ちょうど冬至の頃、太陽神が生まれた日としてお祭りをしていたそうです。12月25日のクリスマスは、このお祭りに「義の太陽」であるキリストの誕生を重ね合わせたのが起源だと言われています。
またエジプトのクリスチャンたちは、神話の中のオシリス神のお祭り1月6日をイエス降誕の日としてお祝いしていました。
西暦325年に、ニカイヤ教会会議にて12月25日をイエスの降誕を記念する日と定めます。聖書の暦では日没から次の日の日没までを一日と数えますので、12月24日の日没からクリスマスに入ります。
その一方で1月6日をクリスマスとして大切にしている地域もあり、多くのキリスト教国では12月25日から1月6日までをクリスマスシーズンとしてお祝いするのがポピュラーなのだそうです。
クリスマスの過ごし方
日本では派手にクリスマスイベントを楽しむ風習が定着していますが、本来はどのように過ごす行事なのでしょう?
○キリスト教会では、4週間をアドベント(待(たい)降(こう)節(せつ))として過ごします。
中村牧師の立っている横には、きれいな紫色と白色のキャンドルがあります。クランツと呼ばれるドーナツ型のリースの上に飾られたキャンドルは全部で5本。中央の白いキャンドルを囲むように円形に並んでいます。
11月30日にもっとも近い日曜日から4回の日曜日を経て12月24日までキリスト教会ではアドベントというクリスマスを待ち望む期間に入るそうです。
4本の紫のキャンドルを日曜日ごとに灯し、クリスマス当日に真ん中の白いキャンドル(キリストのキャンドル)を灯します。
白いキャンドルは、闇のような世界で虐げられた人、貧しい人々にとって光のように現れたイエス・キリストを表しています。このように、クリスマス当日までゆっくりと信仰と心の整理をしながら静かに待ち望みます。紫は心静かに過ごす期間を表し、本日の中村牧師も紫の祭服でした。
○クリスマスの飾りについて
・クリスマスツリー
クリスマスツリーの発祥は宗教改革者マルティン・ルターとも言われており、ツリーには本物のリンゴやロウソクを飾ります。ドイツ・アメリカをはじめとするプロテスタントの国ではクリスマスツリーはよく見られるそうです。
・プレセビオ(クレッシュ)
キリストの降誕物語を人形で表したものです。カトリック教会や家庭でよく飾られます。バチカンでは毎年新しい飾りが用意されます。
参考URL: http://www.occn.zaq.ne.jp/cupxb009/italia2010/2-1.html
・サンタクロース
6~7世紀くらいに聖ニコラウス伝説が流行し、子どもたちにプレゼントするサンタクロースのイメージが定着しました。古くはトルコにいたニコラウス司教という方がモデルとされていますが、正確なところは不明だそうです。司教は緋色の衣装を着ていたことから、サンタクロースの赤い衣装と共通する部分もあります。
・ポインセチア
真っ赤な葉は十字架でイエス・キリストの流された血の色を、緑はキリストがもたらしてくださった永遠のいのちを表しています。リースなどの常緑樹は枯れないことから、永遠のいのちを象徴するものとして飾られます。
・プレゼントを贈り合う
神さまがイエス・キリストという人類にとって最大のプレゼントを贈ってくださったことに感謝して、私たちも何か愛を込めて贈りましょうという気持ちから始まった風習だそうです。
お坊さんと一緒に質問タイム
ツアー参加者とお坊さんたちからは、途切れることなく質問が次から次へと出ていました。
○聖書の中の奇蹟物語は本当?
パンが増える、キリストが手を触れて病人を癒すなど、聖書の中にはキリストの奇蹟の場面が描かれています。この点について中村牧師は、キリストが、社会の中で見向きもされなかった貧しい人びとや障害を負った人びとに手を差し伸べていたことが、すでに奇蹟ではないだろうかと話されました。聖書の中に奇蹟物語が挿入されたことには何らかの意味があるのだとおっしゃっていました。
○日本にはミッション・スクールが多いのに、キリスト教信徒が少ないのはなぜ?
日本人が大切にしてきた古来からの祖先崇拝に対して、キリスト教があまり関心を持っていないことがひとつの原因ではないかと中村牧師は考えていらっしゃるそうです。
代々受け継いでいるお仏壇や神棚を受け継ぐなど家庭の事情があったり、自分がクリスチャンであっても表明しない方もいらっしゃるそうです。
キリスト教は祖先を軽視しているわけではないけれども、キリスト教として日本での新しい局面を探していかなければならないとおっしゃっていました。
○キリスト教の教えで私たちがしあわせになるには?
中村牧師は、「自分でいっぱいいっぱいになっている方も、せめて半分の『いっぱい』くらいにしてください、半分は他の人に目を向けてください」とよくおっしゃるそうです。
人に「寄り添う」気持ちを教会でも大切にしています。自分の周りをしあわせにすることが、やがて自分のしあわせにつながります。
その他、日本聖書神学校でどんな授業をするのかなど、たくさんの質問に丁寧にお答え頂きました。
○まとめ
中村牧師から礼拝堂の祭壇についても細かい説明を頂き、お坊さんたちは不思議そうに聖餐卓などを見つめていました。仏教ひとまわりツアーの参加証も、今回は「Merry Christmas」と雪の結晶を散らした洋風デザインです。
本日の仏教ひとまわりツアーでクリスマスの由来や歴史を学び、飾りのひとつひとつに、祈りや願いが込められていることを知りました。今年は静かに、厳かな気持ちでクリスマスを過ごしてみたいと思います。
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