寺ネット・サンガ「坊コン」「第4回お坊さんあるある!」 プチ法話「お坊さんあるある!」  お坊さん あるある

プチ法話「お坊さんあるある!」 

2014年5月8日(木)、寺ネット・サンガ「坊コン」が開催されました。
お坊さんあるある!」では、お坊さんたちが思わず「あるある!」と頷いてしまうエピソードを伺っています。
今回お話いただいたのは、千葉県流山市にある真言宗豊山派、円東寺のご住職の増田俊康さんです。
増田さんはマジックやジャグリング、バルーンアートなど大道芸の特技を活かし、近隣の老人ホームや幼稚園、各種イベントで活動なさっています。今回のプチ法話では、手品を交えながら楽しくお話いただきました。

○心の中をうつしだす不思議なファイル
増田さんが一冊のファイルを取り出しました。「心の中をうつしだす不思議なファイル」なのだそうです。
ペラペラとページをめくると、ため息をついたり、泣いたり怒ったりしている人の表情が描かれています。不平不満だらけの世界です。

真言宗のお経の中の『般若理趣経』(はんにゃりしゅきょう)には、「如蓮體本染 不爲垢所染 」(じょうれんていほんぜん ふいこうそうせん)とあります。蓮は泥の中に身をおいているのに、咲いた花に泥が混じることがないことを示しています。
悪いものに染まらず、良いものを選び取って美しく咲く蓮の花は、仏さまの象徴でもあります。
私たちも、泥のような世界にあっても悪いものに染まらず、まわりの人の心をやすらかにする蓮の花のような存在を目指すことで、仏さまの世界に近づくことができます。

増田さんが蓮の花びらをかたどったピンク色の散華(さんげ)を取り出しました。
「これを心の中をうつしだす不思議なファイルに入れると……」とファイルに散華をはさみ、再びページをめくります。すると、どうでしょう。
先ほどの泣いたり怒ったりしている絵は、きれいな蓮の花がひらく絵に変わっています。散華の花びらによって「心の中をうつしだすファイル」にやすらかな世界が再現され、大きな拍手が起りました。

お坊さんって本当に悟りをひらいているの?
「本当に法力を持っているの?」と子どもたちに質問されて、「超能力ならあるよ」と手品を披露して喜ばせる増田さん。
大人たちも、増田さんの人柄に心を開いて率直な質問をなさるそうです。
「実際のところ悟りってひらいてるの?」「悟りの方法ってどこかに書いてあるんじゃないの? 内緒にしないで教えてよ」。
増田さんは、「空海上人が本に書いてらっしゃいます」と答えるそうです。
「即身成仏」、すなわち悟りを得て仏になる方法を、空海上人は『即身成仏義』の中で記されています。増田さんがわかりやすく説明してくださいました。

「重重帝網(じゅうじゅうたいもう)なるを即身と名づく」という言葉があります。「帝網(たいもう)」とは帝釈天さまの「網(あみ)」の意です。帝釈天さまは宮殿のようなお住まいにいらっしゃって、内も外もイルミネーションのようにキラキラ光輝く網があります。これらのキラキラしている網が、「重重」と重なっている様子をイメージしてください。
これが世の中であり、キラキラ輝いている世の中であるということに気がつく事が「即身成仏」ということです。

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お互いに輝かせ合う存在

○水晶のお数珠
増田さんが取り出したのはきれいな水晶のお数珠。「本連(ほんれん)」と呼ばれる長いお数珠には、百八個の珠が連なっています。
すべての珠は紐で一連につながっています。電池が入っているわけではないのにキラキラ輝いて見えるのは、お互いの珠が光を反射し、輝かせ合っているからです。
お数珠の珠が曇っていたらどうでしょう。自身の輝きを失うと共に、周囲の珠に反射する輝きも失われてしまいます。
私たちはもともと、お数珠の珠のようにつるつるピカピカの状態で生まれてきたのではないでしょうか。
世間で生きていくうちに、他人を色眼鏡で見たり、立場や経験が珠を曇らせることも出てきます。そのうちに曇った珠は、自身がつるつるピカピカであったことも忘れてしまいます。

○修行で曇りをとる
本来、私たちには「仏性(ぶっしょう)」がそなわっているのに、それを忘れているそうです。
全部自分の中にあって、私たちは普段いつも身につけて歩いているのに、持っていることに気づいていないのです。
お寺に行ったりお坊さんの話を聴きに行く時に、何かを得るというより、自分についた汚れを落とすこと。これを意識してほしい、と増田さんはおっしゃいます。
修行をすることは、曇っていないかなと自身の心に問いかけ、汚れを落とす作業とも言えます。
自身がつるつるピカピカであれば、周囲を輝かせることもできます。
「お互いが関係し合って、お互いに輝かせ合う存在だということに気がつくことが大切」と増田さんはおっしゃいます。

お坊さんとディスカッション「あなたにとって修行とは?」

後半はグループに分かれて「あなたにとって修行とは?」というテーマで話し合いました。
代表のお坊さんがグループの意見をまとめ、発表します。

・日常生活の中で修行という感覚がない
・座禅をしている時に気持ちが良くなったことが忘れられない
・人は自分とは違うのだと意識をすること
・人に会って様々な人の話を聞き、自分の中で消化し役立たせていくこと
・人に対して悪意をもたない
・生きていることそのもの
・チャレンジする生き方をやめられない、ある意味修行なのかもしれない
・会社などの普段の仕事が修行
・一日一日を丁寧に過ごすこと

○修行とは?
修行について「修行とはどういうものか?」という根本的な疑問も出ました。
お坊さんから、笑顔もお布施の一種としての修行であるというお話もありました。また修行は「苦しいものか?」という質問には、「苦行」は修行のひとつのカテゴリーであって、苦しいことが修行そのものを指す語ではないというお話でした。

○まとめ
本日の「坊コン」は、マジックを披露する珍しいお坊さんに、驚きと笑いを交えながら「修行」について考えるという不思議な体験をいただきました。「修行」と聞くと堅苦しい感じですが、水晶のお数珠を通して、視覚的にイメージすることができました。
日々、個人的な事情や都合は出てまいります。不平不満が出て「心が曇ってきたな」と感じたら、水晶のお数珠を思い出しながら「お互いに輝かせ合う存在」を目指したいです。


真言宗豊山派 流山市市野谷 円東寺のホームページ
http://entoujide.gozaru.jp/

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