心に残るあの供養 吉田尚英さん
寺ネットサンガが主催する、宗派を超えて色々な宗派のお坊さんと気軽に話が出来る場「坊コン」が2015年12月15日に日本橋ウィズビジネスセンターにて開催されました。2015年の坊コンは「こんな供養は○○だ!」と題して全6回が行われましたが、今回はその総まとめです。
今日のお話は、寺ネットサンガの代表でもある大田区永寿院ご住職、吉田尚英さんです。「そもそも供養ってなんだろう」という基本に立ち返ってみようと始まった2015年の坊コン。この1年間を振り返って「こんな供養は○○だ!」のまとめと、吉田ご住職ご自身が今まで経験されてきた中で、特に心に残っている供養についてお話を伺いました。
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《「心に残るあの供養」東京都大田区日蓮宗永寿院住職 吉田尚英さん》
○「供養とは何だろう」と若い方は思いがちだと思います。
年老いた親御さんを亡くした場合などはそれなりに受け入れられるのでしょうが、お子さんを亡くしたり、若い伴侶を亡くしたなどの逆縁の場合は、非常に深い悲しみで心に重荷を負うものです。
そういう方にとっては我々僧侶が行って手を合わせるだけでも、随分ホッとして安心してもらえる場面が多々あります。また、葬儀で初めて会う施主さんが私を見て「ああよかった住職が来てくれたらもう大丈夫だ」と安心して涙を流してくれた時などは、袈裟を着て頭を刈ってお勤めをしに行く僧侶としての立場が、安心感を与えたり、ご遺族を慰めることに繋がるのだと実感します。
最近は仏事全般が縮小傾向にあります。20年前は20~30名の規模が一般的だった行事規模は10名以下がほとんどになって来ているのだそうです。
高齢化で一般に長命になり、長生きすればするほど知りあいは先に亡くなったりすることから、身内だけの葬儀が多くなっていきます。その他、少子化の影響や葬儀社が家族葬を勧める傾向にあることも一因だと感じます。
短縮化、簡略化された葬儀では、僧侶は個室に案内されて出番まで待ち、お経をあげてほどなく帰途に就くというような場合もあるのだそう。そんな葬儀の簡略化により僧侶と遺族との関係性も希薄になりつつあります。大きな駐車場を併設した大きな斎場などでは、ノンアルコールビールが普通に出されるなど、お酒を酌み交わしながら故人を偲ぶ機会も少なくなっているそうです。そんな中でも僧侶は、出来るだけ自分から積極的に遺族の方とのコミュニケーションを取るように心がける必要があるでしょう。。
通夜や葬儀というのは世代交代の場でもあり、代替わりをする家庭の状況を知る大切な機会ですから、僧侶は積極的に話を聞いたり話をしたりということが大切なのではないかと思います。そしてそれが、亡くなった方の思いを繋ぐという意味でも大きな役目を果たすことになるのではないでしょうか。
死生観は、大切な方が亡くなった時に改めて感じるものです。
丁寧なご供養をすることによって、参列している方にも、亡き方にも伝わるのではないかと思いながらお題目を唱えています。
サンガ「坊コン」全6回一覧
今年のサンガ「坊コン」の各テーマとプチ法話を担当してくださった僧侶の皆さまの一覧です。
参加出来なかった方はこちらでお話の内容などをご覧いただけます。供養コンシェルジュの樋口さんの実際の相談事例やグループディスカッションの様子も合わせてお読みいただけます。
・第一回のサンガ「坊コン」テーマは「供養」プチ法話は日蓮宗の吉田尚英さん
http://www.eijuin.jp/News/view/9/541
・第二回のサンガ「坊コン」テーマは「宗教・無宗教」プチ法話は浄土宗の吉田健一さん
http://www.eijuin.jp/News/view/9/558
・第三回のサンガ「坊コン」テーマは「位牌・仏壇」プチ法話は臨済宗の藤尾聡允さん
http://www.eijuin.jp/News/view/9/583
・第四回のサンガ「坊コン」テーマは「行事」プチ法話は浄土真宗の松本智量さん
http://www.eijuin.jp/News/view/9/602
・第五回のサンガ「坊コン」テーマは「お骨のゆくえ」プチ法話は高野山真言宗の青木隆興さん
http://www.eijuin.jp/News/view/9/620
・第六回のサンガ「坊コン」テーマは「死生観」プチ法話は真言宗豊山派の名取芳彦さん
http://www.eijuin.jp/News/view/9/627
来年の寺ネットサンガでは、お坊さんのお話だけでなく、他宗教の方をお招きしてお話を伺ったり、葬儀社の方のお話を伺ったりする企画も考えているそうです。テレビでお坊さんを見る機会も増え、新聞や雑誌でも仏教やお寺、お墓の話題が絶えない昨今です。「興味はあるけれど、お坊さんって怖い感じだし・・・」そんな縁遠く、近寄りがたいと思われがちなお坊さんですが、サンガには気さくなお坊さんが宗派を超えて参加されています。ひょうきんなお坊さん、ニコニコと笑顔を絶やさないお坊さん、可愛いお坊さん(尼僧)もサンガにはいらっしゃいます。是非会いにいらしてみてください。
お坊さんと気軽に話せるサンガの「坊コン」
○グループディスカッション
「故人、神仏と思いがつながったと感じた瞬間」が本日のテーマ。見えない世界とつながった瞬間があるかなどを話し合います。いつも通り、話したくない場合は無理に話さなくていいというルールの基で自己紹介をしながら参加者の皆さんとグループディスカッションを楽しみます。
各グループを代表してお坊さんがまとめを発表してくださいました。
・亡くなった後、いつも傍にいるような感覚になった。
・従兄弟に亡き父が憑依して「こんなお葬式は嫌だ」と言われ、その通りに葬式を進めた。今はよかったと思っている。
・住職との付き合いを持っていたので、とても良い葬儀が出来てよかった。
・辛かった時や迷った時に問いかけた時、故人とつながったと感じる瞬間がある。
・音や聴覚、触覚など五感で感じた時に第六感である心が動く。それがつながる瞬間なのかな?
・若い方はあまり死別の経験が無いようですが、スピリチュアルな世界に興味があるようだ。
・今のお寺や神社はスピリチュアルなニーズをくみ取れているかな。もっとくみ取って行きたい。
など。
Q&Aコーナーでは「お坊さんは幽霊を怖いと思いますか?」なんていう質問が飛び出していました。お坊さんになりたての若いお坊さんからは「お坊さんとしての在り方とは?」など先輩僧侶への真剣な質問もありました。
初めて参加した方でも気楽に楽しく話が出来るのがサンガの面白さです。それは普段の会話では話づらい「死」の話や「あの世」の話などができる貴重な場だからかもしれません。
その後、坊コンは忘年会、もとい「坊念会」へと場を変えて盛り上がりました。来年の寺ネットサンガではどんな出会いがあるでしょうか。楽しみです。
心に残るあの供養~寺ネットサンガ「坊コン」
供養 サンガ