雪と万両塚
2月8日、都心では20年ぶりの大雪だったそうです。
四季折々、お寺は様々な表情を見せてくれます。ところが都心では雪の降る日が少なく、私のお寺の四季を収めたアルバムには「雪景色」の写真が抜けていました。
2月8日の朝、窓を開けると目に飛び込んできたのは、一面の雪景色! お寺の雪景色を撮るチャンスです。
家を出発して池上の町に到着ると、降り積もった雪が舞い上がるほど、強い風が吹いています。
チラチラと粉雪が舞う中に見えてきたのは、美しく雪化粧をした万両塚。
真っ白な雪景色の中に、凛としたお姿が印象的でした。
雪と梅の花
こちらは、永寿院さんの境内に咲いていた梅の花です。雪にも負けず、かわいらしい姿を見せてくれました。
それにしても、傘が重たくなるくらい雪がどんどん降ってきます。雪の中、お寺を散策していると『万葉集』のこんな歌が思い出されました。
新しき 年の始の初春の 今日降る雪の いや重け吉事
(あらたしき としのはじめの はつはるの きょうふるゆきの いやしけよごと)
『万葉集』巻二十・四五一六番
大伴家持による『万葉集』の最終歌で、新年を迎え、初春にしきりに降り積もる雪のように、今年も良い事が重なりますようにという意味です。
立春を迎え、ちょうど今日のような雪の多い日に詠んだのではないでしょうか。
池上本門寺の雪景色
先日、霊宝殿にて川瀬巴水の版画「池上本門寺」を拝見いたしました。
松に積もる雪は丸く、やさしい表現で、傘をさして池上本門寺総門へ向かう人々の姿が描かれています。
降りしきる雪の中、人々は何を想って池上本門寺へ歩いていくのでしょう?
雪景色の中に、寄り添って歩く人々の姿はどこか暖かく、また懐かしい気持ちがします。
寒い時、寄り添っていると暖かいですね。人のこころも、不思議と寄り添っているとあたたかい。
午前中、人もまばらだったせいか一面真っ白な境内に、ぽつり、ぽつりと立っている数人の人たちがなぜか自然と近づいて立っていました。やはり池上本門寺の雪景色を写真に収めようとカメラを持っている方が多かったです。
「よく撮れましたか?」「雪がすごくてダメです」
都心ではめったに見られない雪景色に、会話も弾んだ一日でした。
お寺の雪景色
お寺 雪