おせちもいいけどカレーもね ご挨拶とカレー カレー インド

ご挨拶とカレー

明けましておめでとうございます。
本年も皆さまがご多幸でありますようお祈りいたします。

お釈迦さまがお生まれになったのはインドですが、日本とインドの共通点と言えば、まずどちらもカレーが大好きなことでしょうか。私もそうです。
しかしお正月ばかりは特におせち料理やお餅をはじめ、どっぷりと伝統的な日本料理を味わう時期でもあります。いつのころでしょうか、テレビの宣伝文句に「おせちもいいけどカレーもね!」というのがありました。おせちを食べきらないとカレーは作らないという実家の方針を思い出します。

私たちが普段食べているカレーの多くは小麦粉でとろみをつけた欧風カレーと呼ばれるもので、これはさまざまなスパイスを組み合わせてカレー粉を発明したイギリスから明治時代にもたらされたと伝えられています。
そのイギリスではインドカレーが人気です。十年くらい前、ロンドンではチキン・ティッカ・マサラという甘口のカレーが一番人気の食べものでした。さらに中華料理も大人気でいたる所にお店がありました。この二つは今でもイギリス国内では大人気で、日本とよく似ていますね。

日本でも昨今インドをはじめ隣国であるパキスタンやネパールなどから来日した料理人の進出で、いわゆるインドカレーを出す店舗が急増しています。
どちらのカレーが美味しいかと言われても好みの問題ですので何とも言いようがありませんが、インドカレーも日本人に多く受け入れられているのは事実だと思います。

カレーは辛いからカレーと言うのだ」、というのは私が子どもの頃に近所のおじさんから教えてもらった説ですが、真偽はともかくスパイスとして唐辛子を中心にこしょうや生姜も使われていますので辛みはあります。
お釈迦さまの時代にもそれらしい煮込み料理はあったようで、お釈迦さまが最後に召し上がったのはキノコと豚肉のカレーだったという説があるほどです。

ただし現代のカレーと決定的に違うのは、当時のインドカレー(的)料理には唐辛子が使われていませんでした。これは唐辛子の原産地が中南米であり、ヨーロッパからインド伝わったのは16世紀とのことです。
カレー粉は最近になってインドでも作られるようになったそうですが、一般的なカレーの作り方としては各家庭でカレーの種類や好みに応じたスパイスをブレンドした家庭の味ならぬ香りに仕上げているそうです。

分かち合う大事

インドと聞くと厳格な身分制度と階級社会の余波で、観光客の姿を見ると何かもらおうと子どもたちが群がってくる様子がよく伝えられますが、そもそもインドは豊かな国です。ですからアレクサンドロス(アレクサンダー)大王をはじめ諸外国から攻め続けられてきたという歴史があります。インドが貧しいというなら、それは戦争や侵略によって富が奪われたからと言えます。

またこういう豊かさもあります。かつて聞いた話ですが、とある日蓮宗のお坊さんがインドに行った時にこんな実験をしたそうです。何かもらおうと裸足で近づいてきた女の子に、今お金がないからちょうだいと言ったところ、何とポケットから小銭を出して渡そうとしたというのです。
その方は自らの行いを深く恥じると同時に、貧しくても分かち合おうという豊かな心に感銘を受けたと語っていました。

そういうインドの人々は、0(ゼロ)という概念を発見した国民でもあり数字に強く、特に近年インドはコンピュータ関連の事業で世界の重要な一角を占めています。この分野が伝統産業ではないため理論的には出身身分とは関係なく就職可能であることから、能力次第で働ける場として雇用の裾野が広がっているそうです。

さてカレーですが、これだけ日本でももてはやされている背景には何があるのだろうかと考えたところ、かつてインド人の知り合いと印日カレー合戦と称して一緒に作って食べたことがあったことを思い出しました。ちなみに彼らが作った豆カレーは絶品でした。

そこで聞いた話では、当日はチャパティという薄いパンのようなものを目の前で焼いてくれたのですが、インドでもお米に合う食べものということ。そしてカレーはいろいろな食材を大鍋で煮込んで作りそのままテーブルに乗せられ、みんなで分け合って食べられているということでした。その時もそういうスタイルでした。
そういえばかつての日本の食卓でもおかずはだいたい大皿に盛られ、それを分け合ったりゆずりあったりしながら食べるというのが一般的だったような記憶があります。
あたたかい食卓というのでしょうか。今の季節の鍋料理なんてその代表格ですね。

分け合うと言えば、東日本大震災でまだ救援物資が満足にいき届かなかった時、テレビのニュースで避難民の皆さんは足りないとわかっているおでんをみんなで分け合い、インタビューにこれだけあれば十分とおっしゃっていた映像を見たことがあります。その時外国のテレビでは、この状況でなぜ暴動が起きないんだ、日本はすごい国だとニュースで流されていたそうです。
しかしそれらを見聞きしながらいざという時、自分はそこまでできるのだろうか。「自分を勘定に入れず」と言ったのは宮澤賢治でしたが、分かち合うことの大事を学びました。

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関わりと調和の大事

それからカレーはつくった翌日のほうが美味しいと言いますが、材料に使われたあらゆる食材がスパイスをまとい、煮込んだ時の熱が冷めるにつれて互いにうまみを共有し合い、全体が調和していった結果ではないかと思います。いろんな食材が調理され、調和して美味しくなったのではということです。そういえば煮ものも翌日のほうがおいしいですね。

それぞれの個性を発揮させていくのは大事なことですが、いろいろな関わりの中でやがて調和に向かう、平和な状態になっていくというのは人も料理も同じなのかもしれないなあと、自分がカレーをつくっていて思うことです。仏さまがカレーを通して大事なことを説いているかのような気にもなります。

カレーのスパイスは、所変われば疲労回復、消化促進、肝機能の強化、新陳代謝を高めるなどほとんど漢方薬としてあるいは西洋でも古くから薬草として使われているものばかりです。
正月疲れを癒すには、「おせちもいいけどカレーもね!」は正解と言えるかも知れません。ただし胃腸に負担をかけてしまった方は辛さをほどほどに。

今年も元気に過ごしましょう。
私は今夜はカレーうどんをいただいて温まろうと思います。

カレーライスを通して考えたこと

カレー インド

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