春野菜いろいろ
宗祖がお手紙の中で「冬は必ず春となる」とおっしゃったように、生きていればいろんなことがあるわけですが、寒い冬に耐えたあとには必ずあたたかな春がやってきます。
また春は芽吹きの季節でもありますので、今回は春野菜について書いてみました。
春に旬を迎える野菜と言えば、春キャベツや新玉ねぎといた甘味たっぷりの野菜、品のある香りで楽しませてくれる日本のハーブのセリをはじめたくさんあり、毎年食卓から春を実感させてくれています。
それからキノコと言えば秋? いえいえ、椎茸は春と秋の二回が旬となっており、春椎茸という俳句の季語もあるくらいです。ちなみに春のフキをつくだ煮にして冷蔵庫にしまっておくと、秋に食べ頃になります。
また普段は乾物を使うワカメなんていうのも春先に収穫される海の野菜で、春には生わかめが出回り、同じくこの季節に採れるタケノコと一緒に煮た若竹煮が、これまたとても春を感じさせてくれる一品です。
それで前置きが長くなりましたが、私が今回お薦めしたい春野菜は「アスパラガス」です。最近はメキシコ産をはじめ外国産のものが年中売られていますが、私は特に春に出回るアスパラガスの甘味、うまみ、香りが大好きで、花より団子派の私には、桜よりアスパラガスのほうがちょっと楽しみになっているくらいです。
私がかつて10ヶ月ほど住んだイギリスの田舎町では、アスパラガスの出荷時期になるとみんなこぞって農場に直接買いに行くほど、春の到来を実感できる食卓の主役になっていました。
イギリスというところは本来テーブルマナーにうるさい国ですが、この野菜に関しては独自のルールがあるんです。
それは、切らずにまるごとゆでたアスパラを皿に盛り、1本ずつ根元を手でつまんで頭の高さまで持ち上げ、あごを持ち上げてアスパラの穂先のほうからかぶりついて食べるというのが許されていると、公立中学校の元教頭先生が実際に家族と囲んだ食卓で私に教えてくれました。その時私もご家族にならって同じように食べると、美味しく楽しく食べることができ、ますますアスパラガスのファンになったわけです。
みなさんもこんな食べ方いかがでしょうか。
アスパラガスに見習う
みなさんはアスパラガスが地面から生えているところをご覧になったことはあるでしょうか?
ツクシなんかもそうですが、寒い冬に着々と準備を進め、春になると地面から太陽に向かってまっすぐ穂先を伸ばしています。
私はあの姿を思い出すたび、調子は上々、景気が上向きなどなど、いいことは上を向くんだなあとか、やっぱりうつむいていちゃだめだなあ、春風のように気分よく「上を向いて歩こう」じゃないかってことだな、なんて勝手に思っているわけです。
ちなみにアスパラガスには、名前からして想像できるアスパラギン酸というアミノ酸が含まれています。これはアスパラガスから発見されたもので、人体には毒素となるアンモニアの分解と排出を促し、そして疲労回復に役立つ栄養素だそうです。なるほど、心身ともに元気にしてくれる春野菜ということです。
アスパラガスの選び方ですが、穂先がしまり、太めのものを選ぶことです。それから長さです。お店に行くと長いものと少し短めのものが売られています。実はこの野菜は出荷する時の長さが決められているものの、日がたつと根元のほうからしおれていくので、そこをカットすれば短くなるということです。つまり長いもののほうが新鮮となりますから、お財布に余裕のある時は長いものを選びましょう。
それから買ってきたらすぐに食べるのが理想ですが、保存する場合はぬらした新聞紙にくるみ、冷蔵庫の中で生えている時のように立てておくことです。アスパラガスを寝かせるとドアを開け閉めする時のわずかな光に反応し、穂先は上に向かって伸びようとするので、余計なストレスを抱えてエネルギーを消耗するぶん栄養が損なわれ、早く傷んでしまうんだそうです。どうしても寝かせたい時は、軽くゆでてから保存袋に入れて冷凍しましょう。
そんなことで好きな春野菜を美味しく食べて元気をもらい、アスパラガスのどんな状況でも上を向こうとするたくましさを見習っていこうじゃありませんか。
春野菜に元気をもらうことについて
春野菜 アスパラガス