「いつも謙虚に」 ある教授の話 いつも謙虚でありたい 謙虚 教養

いつも謙虚でありたい


私が学生だった頃、『万葉集』の講義してくださっていた教授が興味深いお話をされました。
自分の名前の漢字を他人に伝えるとき、訓読したり、他のわかりやすい単語を持ってきて説明することが多いのではないでしょうか。


女性の名前に「美」がついていることがありますが、教授はその昔、ある生徒さんに名前の漢字を尋ねました。
すると、その生徒さんは「羊に大きいと書きます」と答えたそうです。

教授は一瞬「はて?」と思ったそうですが、すぐに「美」の文字を思い描いてなるほど、と合点したそうです。たいていの人は「美しいの美」と答えてしまうのですが、「美しい」という表現を避けたその生徒さんの謙虚さに感心されたそうです。

「とても良い説明の仕方だと思いませんか?」と、教授は目を細めながら、受講していた私たちの顔を眺めていました。

私の場合は友美ですから、あまり迷うことなく「友だちが美しいと書きます」と答えてしまいますが、こんなふうに「羊に大きいと書きます」と答えられるような女性はステキだな、と思います。
本当に教養のある人とは、きっとこんなふうに、謙虚さを粋な表現でサラッと流すことができる人なのかもしれません。

肝心の講義の内容はほとんど忘れてしまったのですが、なぜか照れた様子で教室を見まわした教授の顔と、こんなちょっとした小話はよく覚えているのです。


「いつも謙虚に」 ある教授の話

謙虚 教養

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