年の瀬にあたり自分が見直すべきこと 日本人とクリスマス 寛容 心を寄せ合って

日本人とクリスマス

十二月になりました。

何かと慌ただしくなって来ましたが、世間で今月一番の話題と言えば、クリスマスということになるのでしょう。
しかし「メリークリスマス」と言ってプレゼントをもらってケーキを食べた人も、多くの場合そのちょうど1週間後は神妙な顔つきでお寺や神社へ初詣に行くわけです。しかもこういうことに疑問を持つことはあまりないようですね。

『広辞苑』にクリスマスについて聞いてみると、「キリストの降誕祭。12月25日に行う。もと太陽の新生を祝う〈冬至の祭り〉がキリスト教化されたもの」。と書かれてあります。キリスト教が冬至のお祭りをキリストの誕生日として取り込んだということのようです。キリスト教にとっては大事な宗教行事ですが、日本では明治以来、おおむね年末イベントとして定着しています。

さて、日本でこんなにクリスマスが流行る理由は、冷めた目で見れば年末商戦ということにつながるんでしょうが、何かとおしゃれである上、日本が多神教の国で神さまに寛容だからというのがもっともな理由だと思われます。

というのも、日本には八百万(やおよろず)の神々というくらい、海や山だけではなく、ここにもあそこにもどこにでも神さまがいらっしゃって、人間を含めた自然のバランスを神々が営んでいることになっています。八百万というのは、ひと言で言えば数え切れないくらいたくさんという意味です。そのくらいの神さまがいらっしゃる国ですから、日本人から見れば海の向こうの外国に神さまがいても、何ら不思議ではないということになるんですね。ですからよくよく考えなくても、日本独自の方法でクリスマスを楽しんだりできるわけです。

このように異質なものだからといって排除せず、寛容な態度で受け入れる。そして良さそうなものであれば手を加えて、もっと有用なものへと変えていくというのが日本流です。
では、この寛容という態度がどのように培われたのかをちょっと探ってみましょう。

まず日本には豊かな自然があります。そして全ての命は、自然界のいろいろなものからたくさんの恵みをいただいて支えられています。おそらくご先祖さまは、現代で言う多様性を学び取り、神々と自然を畏(おそ)れながらも「おかげさまで」という思いで暮らしていたはずです。
そしてここから世の中にはいろいろなものがあるのだから、いろいろな人の考えや思いがあっても当たり前という考えが生まれますが、社会にはある程度の秩序が必要です。自分さえよければということでは、みんなが幸せという社会にはなりません。
そこで仏さまは、あらゆる命の価値は平等であるのだから、みんなが安心できるよりよい暮らしに発展させていくには、「心を寄せ合って生きる」ことが大事という菩薩道(ぼさつどう)の教えを説かれています。
仏教が伝わる前に日本には儒教などの思想も入っていたようですが、ご先祖さまは菩薩道の教えも受け入れて実践し、日本人の寛容という精神ができあがっていったと私は考えています。

年の瀬にあたり自分が見直すべきこと 日本人とクリスマス 寛容 心を寄せ合って

ご先祖さまから受け継いだもの

そもそも仏教が日本に根付いたきっかけは、西暦538年に朝鮮半島にあった百済(くだら)という国の聖明王(せいめいおう)という王さまの紹介で、仏さまが日本にやって来られた【仏教公伝】ことにあります。この世は娑婆世界(しゃばせかい)というお釈迦さまの国なんですが、人間の区分けで言えば、当時仏さまは外国からやって来られたということになります。

しばらくして仏教受け入れ派の蘇我氏と否定派の物部氏との間で戦いがありましたが、結局どちらか一方が勝ち残ったということはなく、私たちのご先祖さまは神道と仏教との共存【神仏習合】を選択し今に至っています。これは神道にも仏教にも「寛容」という要素があるからに他なりません。こうして日本人の世界に誇るべき精神文化が築かれていったといっても差し支えないでしょう。

ちょっと大げさな言い方をしましたが、一例を挙げれば12月4日で東日本大震災が起こって1000日となりました。残念なことに8月現在、まだ約2万5000人の方々が帰還困難のため避難民のままという日々をお過ごしですが、大震災当時、暴動が起きることなく少ない食べ物をわけあって支え合った被災者の皆さんを世界中が賞賛しました。
この美しい姿に国内のみならず、世界中から心温まる多くの支援が寄せられたのは、私たちのご先祖さまから受け継いだ精神文化のたまものです。
また今も私たちは、まだまだ心を寄せ合わなければならない日々が続いていることを忘れないようにいたしましょう。

最後に世知辛いと言う表現がありますが、昨今の何かと自分勝手で落ち着きのないギスギスした感じがします。ここから安心を求めるには、被災者の皆さんを見習い、ご先祖さまから受け継いだ日本人の寛容さというものを見直すことに尽きる気がします。私も年末の反省として日々の振る舞いから見直していきたいと思います。


それからついでのようで恐縮ですが、12月と言えば、仏教徒にとってとても大事な行事があります。
12月8日はお釈迦さまがお覚りを得られた仏教徒の祝日「釈尊成道会(しゃくそんじょうどうえ)」です。その日以来、この世で私たちを教え導いて下さっているお釈迦さまに感謝を申し上げる日です。

いろいろ申し上げましたが、皆さま今年もおつかれさまでした。
来年はもっと心穏やかな暮らしができるようお互いにがんばりましょう。
ではどうぞよいお年をお迎えいただき、気をつけて初詣にお出かけ下さい。

日本人の精神文化

寛容 心を寄せ合って

年の瀬にあたり自分が見直すべきこと日本人とクリスマス