冬になると陳皮づくりに精を出すこと 陳皮づくり ミカン 陳皮

陳皮づくり

新年明けましておめでとうございます。
楽しいお正月をお過ごしになられましたでしょうか。
本年もお付き合いのほどよろしくお願い申し上げます。

さてこの時季、旬の果物は何と言ってもミカンです。
私はミカンが好きなのでよく買うんですが、食べるだけではなく、ここ数年陳皮(ちんぴ)作りをしています。
それまではポイポイ捨てていたミカンの皮ですが、何となくもったいない気になり、何となく作り始めたわけです。

陳皮は漢方薬としてつとに有名です。
私は医者でも薬剤師でもないので医学的なことは分かりませんが、陳皮は胃の不調や咳止めなどに効果があると言われます。中には10年ものの陳皮というのもあるそうで、長く乾燥保存させたものは薬効が顕著なのだそうです。

もっとも私たちになじみのあるものと言えば、やはり七味唐辛子の材料ということでしょうか。
今では食卓に欠かせない日本のスパイスになっていますが、オレンジの粒を見ると、陳皮がちゃんと入っているなあなんて思います。
七味唐辛子は江戸時代に江戸両国の薬研堀(やげんぼり)で、漢方薬の作りかたを参考にしながら発明されたと伝えられています。薬研堀というのは地名ですが、薬を調合する薬研に似たお堀があったことから名づけられたそうです。日本の三大七味(日本人はこういう言い方が好きですね)は東京・浅草寺門前の「やげん堀」、京都・清水寺門前の「七味家」、長野・善光寺門前の「八幡屋磯五郎」と言われ、いずれも古刹の門前町にあります。もちろん古刹でなくても多くの参詣者が集まるお寺や神社でもこの光景は見られます。神仏に身体の健康や復調を祈った帰り道に、人々が求めてきたのでしょうか。

さて話を陳皮づくりに戻して、と言っても、やることと言えばミカンの皮を手でちぎったり、はさみで切り刻んだりして干すだけです。そしてカラカラに乾いたらジッパー付きの保存袋に食品用乾燥剤といっしょに入れて放っておくだけのことですが、いろいろ調べた結果、1年くらいは乾燥を続けないと薬効成分が充実しないのだとか。つまり今作っているのは、来年の今ごろ使うためということです。
気の長い話ですが、こういうことをしていると、とりあえずまた1年がんばろうじゃないかという気にもなるというものです。
とは言えミカンのシーズンが終わると陳皮のことなどすっかり忘れてしまい、寒くなって店頭でミカンを見かけるようになるとまた思い出すといったここ数年です。

当初、ミカンを食べるたびに皮を刻むのは面倒だなと思っていましたが、身を食べる前に皮を刻むというのを習慣づけるとそうでもなくなります。さらに私の場合は食べたぶん刻む量が増え、これが食べ過ぎと買い過ぎ防止にもつながっています。何より旬の最後の1個の皮を刻み終えると、この冬もよく食べたねぇ。「塵も積もれば山となる」とばかりにできあがった“修行中”の陳皮を見ては、よくがんばったねぇと自分をほめるネタがまた1つ増えるわけです。

冬になると陳皮づくりに精を出すこと 陳皮づくり ミカン 陳皮

陳皮湯でポカポカ

それで私が陳皮を何に使うのかと言えば、煮物などの料理にも多少使いますが、主に入浴剤として使っています。
浴槽にお湯を貯め始めると同時に、小さめの洗濯ネットに陳皮を1つかみ入れて浴槽に放りこんでおくだけ。お湯につかるとちょっとぴりっとするものの、ほのかな香りとともに身体がポカポカしてきます。特にうちの風呂は追い炊き機能なんていう便利なものは付いていませんから寒い冬こそありがたいものとなります。また陳皮にはリラックス効果や美肌効果もあるそうです。陳皮のお風呂は、ミカンがたくさんなってくれたお陰で美味しく食べられて、しかもお湯にもつかれるなあ、なんてとても落ち着きます。

さて、日本ではお風呂や温泉につかると「極楽、ごくらく」と言うのが決まり文句となっていますが、極楽(西方浄土)は阿弥陀さまの仏国土です。さぞかしいいところだと思いますが、私たちが住んでいるこの世は娑婆世界(しゃばせかい)と言ってお釈迦さまの仏国土です。
娑婆世界のその本来の姿は経文の中で「我が此の土は安穏にして、天人常に充満せり…宝樹には華・果多くして衆生の遊楽するところなり~本来の仏さまの国はいつも穏やかで、神々と人々であふれ、…樹木にはたくさんの花と果実が満ち、さまざまな楽しみの中で暮らせるのである(法華経・如来寿量品第十六)」と明かされています。
仏の浄土、つまり私たちが住む世界も、本当はいいところだということです。しかしこの世が安穏とは言えないというのなら、社会が個人の集合体である以上、それは私たち一人一人の心の汚れが原因になっているということになります。そしてその汚れとは、身勝手な私の欲に違いありません。

では、そういう心の状態をどのようにしていけばいいのか。
仏さまによれば私たちには、早口言葉みたいな仏教用語ですが、自性清浄心(じしょうしょうじょうしん)と言って、生まれながらに備わっているきれいな、そして汚れをきれいにしていく心というのがあります。
この心は、例えばつまみ食いのようにこそっとやる悪いことをした時、これをバツが悪いと思えるきれいな心のことです。そしてバツが悪いままにせず、もう悪いことはしないようにしよう、あるいはやめさせてあげようと思える心のことを言います。
この心が自分自身の中にもあることに気づき、実感し、仏さまの智慧を使って大いに発揮させていくことが、私の心を不安から安穏へと変えていく方法だということです。
お風呂に入って身体のよごれと疲れを落としてさっぱりするように、こんなふうに心もさっぱりとしたいものです。

初詣や年始の挨拶回りでくたくたになった方もいらっしゃることでしょう。
ゆったりお風呂につかって、身も心もさっぱりとしてお互い今年も1年がんばりましょう。


ミカンについて―
明治以降栽培が盛んになったミカンですが、400年くらい前に中国から鹿児島に伝わったのが日本のミカンの始まりで、その後品種改良され現在のミカンに至っています。
ミカンの多くは段々畑で作られます。ミカン畑のある景色はとてもきれいなものです。
ミカンは簡単に皮がむけるので食べやすい上、特に風邪を引きがちな冬にはビタミンCがたっぷり含まれているのでおすすめです。また薄皮ごと食べれば食物繊維が豊富に摂れますし、皮をむいた時に身に付いてくる白い筋には、毛細血管を強化するポリフェノールが含まれているそうです。
入浴剤として陳皮を使う場合は、肌に合わない場合もあるそうですのでお気を付け下さい。(ジュニア野菜ソムリエ・岡本さん談)

陳皮について

ミカン 陳皮

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