花まつりの物語~六牙の白象(ろくげのびゃくぞう) 4月8日は花まつり 白象 花まつり

4月8日は花まつり

花まつりといえば、お釈迦さまのお誕生日です。
その日は紀元前463年4月8日と伝えられ、日本はまだ弥生時代の頃です。私の計算能力が確かならば、今から2478年前のことです。

お釈迦さまはこの日、当時ヒマラヤの南麓にあった釈迦族の国の太子としてお生まれになり、ご結婚後1男を設け29歳で出家、35歳でお悟りを得られて以来80歳でご入滅されるまで誰彼の区別なく教えを説いて仏の智慧を授け、人々に安心と生きる勇気を与え続けられました。

今回は花まつりにちなみ、お母さんの摩耶夫人(まやぶにん)がお釈迦さまのご懐妊を知るきっかけとなった「六牙の白象」にスポットを当ててみたいと思います。

仏伝(お釈迦さまの伝記)によれば、浄飯王(じょうぼんのう)とご成婚された摩耶夫人は、ある夜、夢の中で遙か天空から「六牙の白象」がやってきてご自分の右脇から体内に入ってきたのを見たと言い、これを「托胎霊夢(たくたいれいむ)」と言います。
夫人は夢から覚めると、偉大な命を授かったに違いないと太子の懐妊に気づかれたそうです。

これは兜率天(とそつてん)というところで菩薩として修行していたお釈迦さまが、この世に下りてこられた瞬間だと伝えられます。
また現在は、次に仏になる弥勒(みろく)菩薩さまが、同じく兜率天で修行されています。

こういうドラマティックなお話を、現代文明を通した冷めた目でみれば「そんなこと、あるわけない」と言われかねませんが、むしろこの物語を通して当時の人々が後世の私たちに何を伝えたかったのかと考えてはいかがでしょう。
何よりお生まれになったことが今日までこのお話で伝えられ、去年までに2477回も誕生日に祝われている方です。視点を変えて着目すればいろいろ学ぶことがあるはずです。

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六牙の白象が意味するもの

もっともこのお話しを紹介する理由は、以前「なんで象に牙が6本生えているんですか?」と聞かれたことがあったからなんですが、ものごとには理由があるもので、もちろん6本の牙にも、象の色が白いのにもわけがあるんです。

まず6本の牙から見てみましょう。
これは古来「六波羅蜜(ろくはらみつ)」という菩薩の6つの修行徳目を表していると伝えられています。波羅蜜とは「これができれば完璧」という意味で、悟りを得るために完成させておかねばならない6つの修行です。つまり6本の牙を持っているとは六波羅蜜を完成させ備えているということです。
1つずつ見ていきましょう。
1 布施(ふせ)波羅蜜…区別なく他人さまの役に立つ
2 忍辱(にんにく)〃…どんなことにも耐え忍ぶ強い心を持つ
3 持戒(じかい)〃…自分で決めたきまりを守る
4 精進(しょうじん)〃…努力を惜しまない
5 禅定(ぜんじょう)〃…心身をきたえ、いつも心穏やかに保つ
6 智慧(ちえ)〃…慈悲を土台とした上記5つの活動方針

書いてしまえば簡単なことのように思われますが、この6つを徹底させることは極めて困難なことです。多かれ少なかれ六波羅蜜に対して私たちの日常生活と言えば、

1’ わがまま、自分の取り分を優先する
2’ すぐムッとする、怒る
3’ 飲み過ぎ食べ過ぎ、ダイエットが続かない
4’ めんどくさいと言ってやめる
5’ 不安な要素を知らんぷりする
6’ 自分勝手に振る舞うとスッキリする

どうでしょう。(半分くらい、…たぶん)私そのものです。
六波羅蜜を通して、ここから自分の心をもっと成長させる具体的目標が見出せそうです。

次に白象ですが、
そもそも象というのは、神聖な生きものなんだそうです。中でも白は何にも染まっていない最も神聖なものを示す色として、かつて仏教国タイの国旗には白象の絵が描かれていたほどです。

こういうことから仏伝は、修行を完成させたお釈迦さまが、私たちに心の安心と生きる勇気を与えようと、仏となるべくこの世にやって来て下さった存在だということを、「六牙の白象」として表したと言えるでしょう。

花まつりはそういうお釈迦さまの誕生を祝う行事ですから、誕生仏の仏像が主役になりますが、そもそもどういう存在としてお生まれになったのかを伝えてくれている「六牙の白象」は物語上“一人二役”ながら、私たちが目指す生き方のお手本や大事を伝えてくれています。

ちなみに法華経は正しくは「妙法蓮華経」と言いますが、漢訳される前のインドの古代語を現代語で直訳すると「正しい教えの白蓮(びゃくれん)(岩波文庫『法華経』)」となります。
そして今でも蓮は白い色の花が咲くものが最も高貴とされているように、妙法蓮華経という経題は、お釈迦さまがご自身の心のままに慈悲と智慧を説かれた、最も徳の高い教えに付けられた題目です。


花まつりの詳細については、かつての小欄「花まつりによせて」
http://www.eijuin.jp/News/view/16/254 をご参照下さい。



写真は、托胎霊夢(上)、蓮の花(下)

花まつり、六牙の白象について

白象 花まつり

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