トマトについて
実は私、ジュニア野菜ソムリエなんですが、たまには野菜のお話しもいいかと思い、好物のトマトについて書いてみようと思います。
トマトはハウス栽培の技術の向上にともない、お店に行くと常時たくさんの種類が並べられていますが、これからがとくに美味しくなる時季を迎えます。
真夏に赤く熟した新鮮なトマトを冷やしてかぶりつくと、ひんやりとしてみずみずしく、甘味とほのかな酸味、そしてふくよかな香りで私たちの五感を楽しませ、滋味が体じゅうにしみわたるような気分になります。お行儀はさておき、けっこうぜいたくな気分になる食べ方です。
またチェリートマト(プチトマト)をいくつも口に放り込むというのも捨てがたいです。ウマイです。甘さを求めるなら黄色い小粒のルビートマトもおすすめですね。
真っ赤なトマトの赤色はリコピンという色素なんですが、「トマトが赤くなると医者が青くなる」と言われるように、この色素は抗酸化作用により私たちを生活習慣病やガンといった大病から遠ざけてくれる働きがあることが分かっています。
そして真っ赤に熟したものほどビタミン類やミネラル分が多く、夏の疲れにも効いて私たちの健康にとても役立つ野菜となります。
そのトマトですが、江戸時代にヨーロッパから日本にもたらされたものの、当時は味覚という点で日本の料理界には受け入れられず、もっぱら観賞用の植物だったそうです。
明治になると西洋料理の普及にともない日本でも食べられるようになりましたが、人気野菜になったのは日本人の味覚に合うように品種改良が進んだ昭和の中頃になってからです。
トマトは本当に夏野菜か
トマトはとかく夏野菜の代表格に位置づけられますが、一番の食べ頃はいつかというと、実は真夏ではないんです。
というのも、トマトの原産地は南米ペルーのあたりのアンデス山脈の高原地帯と言われています。このあたりは赤道の南で平地ならとても暑くなりますから、夏はトマトと言われることになったようですが、原産地は山脈であり標高が高いので昼夜の寒暖の差が激しく、また雨の少ない地域でもあります。
そういうところで生まれたトマトですから、実は日本の高温多湿、特に梅雨には弱いんです。
そうなるとトマトが一番ストレスを感じない、すなわち原産地にもっとも近い気候の時期はと言うと、昼は太陽の光がしっかり射して暑い日もあるが、夜は小寒い時もあり、雨も多くない。関東では梅雨前のまさに今の時期が、トマトにとって1年で本当の旬となるんです。
そしてもう1回、旬があります。それは同様に原産地に近い気候になる秋雨が終わってから肌寒さを感じる前までです。
美味しく食べられるチャンスを逃さないようにしてください。
また日本で栽培されるトマトも例外に漏れることなく、これまでに日本の環境でも上手に育つよう、美味しい実がなるようにとさまざまな品種改良が加えられてきました。
しかし生まれ持った性分というのはなかなか消えるものではなく、そのため原産地に近い環境で育てようとハウス栽培が盛んになっているわけです。
そんなふうに遙か遠く離れた国で、人間の手によって品種改良といういろいろな要素を取り込んできた日本のトマトですが、梅雨直前や秋雨後が一番上手に育つというのは、それでも故郷のことは忘れていないよということなのかもしれません。
親に電話でもしてみるか。
ちなみに先ほど言いましたリコピンは、熱に強く油と相性がいいという性質を持っています。同じ量なら、例えばトマトや香味野菜を煮詰めて作るケチャップのほうがたくさん含まれています。
私はオリーブオイルを使ったトマトソースのスパゲティが好きですが、みんな大好きナポリタンもおすすめです。
次回はまた仏さまのお話しに戻りたいと思います。
トマトについて
トマト 品種改良