平成24年8月27日、東京都多摩地区の林業・製材・塔婆加工の現場をお坊さんとともに訪問しようというスタディーツアーを開催しました。
東京都日の出町は塔婆の産地です。かつては樅の自然木が塔婆の材料でしたが、すでに取りつくされ、戦後、成長の早い杉が植林されました。
しかし、昭和36年の外材輸入解禁以降、日本の林業は大打撃を受け、山は放置され、一度も切り出されることもなく現在に至っている山も少なくありません。
そんな中で、少しでも杉の需要を喚起しようと有志の僧侶とともに「杉塔婆の普及を考える会」を5年前に立ち上げました。
今回のスタディーツアーは、山の木がどうやって塔婆になるのか順を追って見学しました。
はじめに、東京で唯一の林業家 田中惣次さんのご案内で山を歩き、何世代もに渡って山を育てることの大変さと尊さを知りました。
2番目に、伐り出された木が競りにかけられる原木市場を見学。
3番目は、市場で競り落とされた原木が板に挽かれる様子を製材工場で見学。
台車に載った丸太が帯鋸でスライスされる様は圧巻でした。
最後に塔婆工場を見学。厚さ1㎝ほどに挽かれた板が丁寧に塔婆に仕上げるための幾つもの工程を見学。多くの職人さんの技術と思いで塔婆がつくられることを実感しました。
私たちの身のまわりには、地球上のあらゆる場所から届く品々があふれています。そして、その産地の自然環境や人々の暮らしまで想像をするだけの余裕もありません。
しかし、杉塔婆の場合は多摩の山の木が手元に届くまでの工程を1日で見る事が出来ました。林業の現状や製造にかかわる人たちの思いにふれると、何が大事なのか見えてくるように思います。
今回の参加者は僧侶6名、一般8名、環境と人間のかかわり方を学ぶよい経験ができました。今後もこのようなスタディーツアーを実施していく予定です。
「交友録」にもツアー参加者の感想が掲載されます。
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