7期 第10回 池上市民大学体験記 「霊宝殿お風入れ」について お風入れ 霊宝殿

「霊宝殿お風入れ」について

第10回池上市民大学は、はじめに霊宝殿にて、学芸員の安藤昌就さんから7月25日の行事「霊宝殿お風入れ」にまつわるお話をお伺いしました。

霊宝殿お風入れ」は池上本門寺の年中行事のひとつです。一年に一度、虫干しを兼ねてご宝物が公開される行事です。
昔は一年に一度だけ池上本門寺のご宝物が一般に公開されるということで、多くの参拝者が訪れたそうです。
霊宝殿が完成した現在、毎月の展示替えでご霊宝は数点ずつ展示されるので、1年に一回の虫干しの必要はなくなりましたが、「お風入れ」の伝統を引き継いで7月25日は、池上本門寺が所蔵する日蓮聖人の貴重な御真蹟を無料で拝観できる特別な日となっています。

拝観する私たちにとっては「お風入れ」は楽しみな行事のひとつですが、学芸員の安藤さんは大忙し。
霊宝殿ができる以前のおかぜ入れの日は、安藤さんが準備を始める午前7時から午後3時まで、万歩計で測ってみたところ、なんと2万5千歩も歩いていたというお話には驚きました。

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今月の霊宝殿

霊宝殿に入りますと、入り口右側に大切なご宝物を守ってきた長持が展示されています。
ご宝物が現代へ引き継がれてきた歴史と、今回展示されている日蓮聖人の御真蹟について、安藤さんからご説明を伺いました。

○葵紋黒漆塗長持
記録によりますと、池上本門寺には葵紋付の漆塗りの長持が二つ、そして葵紋のない長持が五つ、計七つの長持があったそうです。
池上本門寺が昭和20年に戦災に見舞われた際に、一つの長持が救出されました。
展示されている長持の左側が損傷しておりますが、空襲の際に長持を救出の時についた傷で、当時の切迫した状況をうかがい知ることができます。
表面に点々と沁みのような模様がついており、これは空襲の火の粉の痕だそうです。
池上本門寺が空襲に見舞われた際の混乱と、長持を助け出そうとする人々の必死な様子が伝わってきます。

今回展示された長持は平成4年まで実際に使用されていたもので、封印された姿で展示されておりました。

○日蓮聖人の御真蹟
霊宝殿の入り口から、御真蹟の年代が若い順番で並んでいます。
お若い頃は細かい文字、お年を経るごとに私たちには馴染み深い豪快な筆跡へと変化していく様子がはっきりとわかります。
大切な教えを説いている部分や、日蓮聖人のご署名の部分は、過去において有力な檀信徒に断片として授受されたというお話が印象的でした。

○「妙法尼御前御返事」(弘安元年1278年:都指定文化財)
全九紙で成り立っていたお手紙のうち六紙が池上本門寺に伝わっています。
このお手紙はご信者であった妙法尼御前が夫の臨終の様子を伝えたお手紙の御返事として日蓮聖人が書かれたものです。
ご主人の信心深さがご臨終の折りにも現れており、その功徳は奥様の妙法尼御前にめぐりめぐってやって来ると御返事には述べられています。
全九紙で成り立っていたお手紙は、三紙失われており、失われた第二紙にはご臨終について、第八・九紙には女人成仏について書かれていたそうです。

「御真蹟を並べることで理解を深めることができます」と安藤さんがおっしゃっていた通り、お手紙の筆跡から感じることも多かったです。
文が少し斜めに傾く癖や、お手紙の一つ一つの右肩に数字をふって読む順番を示されたり、日蓮聖人のお人柄を感じる貴重な展示の数々でした。


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仏教の話「法華経を生きる」

毎月一回、池上本門寺朗子会館にて池上本門寺学頭の市川智康先生による「法華経を生きる」が開講されています。
今回の池上市民大学ではこの講座を聴講いたしました。

「法華経を生きる」は、本来市川先生なりの法華経の解説をいただく講座なのですが、今回は初めて聴講する池上市民大学生に合わせて、わかりやすいお話に内容を変更してくださったようです。

「正法」お釈迦さまの教えが正しく伝わる時代が千年
「像法」お釈迦さまの正しい教えの影が引き継がれていく時代が千年
「末法」お釈迦さまの正しい教えが途絶えて恐ろしい時代が到来し、その時代は万年続くとされる

お釈迦さま御入滅から二千年後に「末法」の時代が来るといわれ、その時期は1052年(永承7年)とされていました。
鎌倉時代の日本では政治が乱れて天災も多く、人々は飢えと貧困の中におり、混乱の時代であったことは私たちは歴史の時間に学んでおります。
ちょうどその頃にご活躍なさったのが日蓮聖人で、日蓮聖人がお書きになった御曼荼羅本尊の右下のあたりに「仏滅度後二千二百二十余年」の文字が記されています。「御曼荼羅の文字にもちゃんと意味があるんですよ」と市川先生が教えてくださいました。

仏さまの世界観にふれて、小千世界が千個ある中千世界、さらに中千世界が千個ある大千世界があり、小千世界・中千世界・大千世界を包括した三千大千世界があるとのお話もありました。
三千大千世界という言葉は難しいのですが、宇宙の中にたくさんの銀河系があり、さらに銀河系の中にたくさんの星があり、その星の一つ一つに世界が存在していることに似ているそうです。こうして「宇宙」という言葉をお聞きしますと、漠然とした仏さまの世界がイメージとしてふくらんでくるのを感じます。

最後に市川先生は「法華経を生きる」を聴講している私たちに、「おじいちゃん、おばあちゃんが、お孫さんに仏教を伝えていってほしい」とおっしゃっておりました。


7期 第10回 池上市民大学体験記

お風入れ 霊宝殿

7期 第10回 池上市民大学体験記「霊宝殿お風入れ」について